おはようございます。けうです。
しばらくマーケティング論でいきますが、哲学の発想も加えていますので、どうかご了承下さい。
今日は、サービスの工業化について話したいと思います。
T・レビットの論文を参照にします。
レビットの言うサービスの工業化とは、従来人がやってきたサービスを、顧客が進んでやるシステムを作り上げることです。
ポイントは
①工業化の発想でサービスを体系化すること。
②多額の資本を投入すること。
です。
前回、サービスと商品を分けて考えるのではなくて、一緒にして考えようと述べました。
>>サービスのシステム化とは
今回は一歩進んで、サービスも工業化するのがいいという発想です。
サービスのあり方を変えていく、という発想に移ります。
まずはサービスのあり方について述べていきます。
サービスの元の意味とは
従来のサービスはserveという英語が元です。
この意味は執事とか、下僕とか、小間使いとか、いずれも一対一で個人使用のサービスを提供するという意味で取られてきたそうです。
顧客その人の好みを知り尽くして、それに精いっぱい答えるというのが元の意味になります。
でも、レビットはこの意味自体を変えてしまおうといいます。
1対多数で良い、と。
サービスの仕えるという方面じゃなくて、他の効率的、信頼性、品質のサービスに焦点を当てようと考えます。
では、どうしてこちらに焦点を当てようとなったのか。
それは、仕えることを重要視すると経済が発展しないとわかってきたからです。
では、具体的に現在はどうなってきたのか、というのを歴史から見てみます。
発展途上国と先進国を比べてみます。
発展途上国はモノ自体が少ないので、そのモノの需要がまだまだあるので、それ単体で売れるので伸びが早い。
一方、先進国はモノがあふれているので、実際のモノの需要が少なく経済が停滞することがある。
では、モノがあふれている場合、何が売れるのか、を考えてみます。
その場合に強く意識されるのがベネフィットです。
ベネフィットとは、商品やサービスに求められる価値や効果や利益のことです。
商品やサービスを通じて提供できる便益。
先進国において売るものは物自体ではない、ということになります。
ここでは、ベネフィットの中のサービスに焦点を当てていきます。
では、どのようにサービスを売っているのでしょうか。
サービスの新しい形ー信頼性の重視
サービスでは特に、その人の悩みに焦点を当てて、その人が望んでいるものを提供します。
そのようなサービスは1対1という仕えるという性質よりも、1対多数から見られるサービスになってきます。
仕えるというより、もっと大きな発想。
一対多数でも求められる関係性のサービスが生み出されます。
例えば、人間の欲求は4つあると脳科学で言われています。
達成欲、危険回避欲、権威欲、親和性欲。
1対1の欲求はもちろんあります。
1人に尊敬されたいとか、誰か1人に見ていて欲しいとか。
ですが、社会が大きくなるにつれて、1人から多数の視点が入ってきます。
その尊敬を示す1人は、その1人だけに尊敬を示すのでは経済が成り立たない。
仕える側だとしても、大人数に目を向けだしたのです。
こうして、本来の欲求にもっと近いものが商品として提供できるようになったといえます。
元からのサービスは必要な一方、あらたな多人数を見るサービスの需要があったのです。
1対多数⇨1人で多数が望むサービスを実現させる
そして、科学技術が発達した今、その需要を満たす考え方が新しくできるようになってきた、ということでもあります。
例えば、その仕えている1人がマッサージ師だったとして、従来は1人をマッサージしていた。
けれど、マッサージ器を導入することによってより多くの人の欲求を満たせるようにする。
新しい技術を使うと、いろんな欲を満たせるようになります。
サービスの新しい形の例
私がなるほど、と思ったサービスの一例をあげます。
今までは、仕事をする側が出来上がった商品を買い手に渡してきたのですが、その過程を売ってしまうと言う話です。
例えば、お金を払ってでもボランティアに参加する、という形です。
ボランティアというのは、無償だったり、それをやる人にお金を払ったりしますよね。
でも、そもそものボランティアをやろうとした顧客のベネフィットを読み取ると、困っている人を助けたい欲がある。
そして、ボランティアで募金したとしても、その募金は何に使われているのかわからない。
信頼性が損なわれている。
それならば、自らがそれにお金を払ってでも参加できるようなシステムを開発する。
これも買い手側の信頼性を上げるとともに、困っている人を助けられると言う本来の心の悩みに答えているサービスなのです。
新しいサービスとして人の欲求を具現化する
私たちは便利性を追求してきました。
けれど、その結果として叶えられなくなった欲が出てきてしまっていた、ということです。
簡単に食料が入るから、農作物を育てたり、狩りをするのが特別なことになってきた。
その特別なことにサービスとしての需要が生じている状態です。
参加することで達成欲や、新しいものに接するという好奇心欲も刺激できます。
なんでも商品として考えられるようになってきたということです。
例えば、何かやるのに失敗は買ってでもしよう、と言われています。
この場合、失敗することを商品として購入できるようにすることがサービスになります。
失敗はしたくない、とみんな実生活では思いますよね。
なので、商品としてその場だけでもその欲を叶えるという需要がでてくるのです。
こういう手に入りにくいものを提供できるサービスに需要があがってきているということ。
それは、めんどくささに需要があるということに繋がってきます。
こうやってサービス自体を考えていけば、モノがあふれている時代であっても、商売ができるということです。
信頼性を売る、というのはそのサービスを考えた先もあります。
信頼性がないと、失敗を買うことはできません。
実生活に被害が及んだら嫌だからです。
サービスの工業化の具体例
T・レビットはサービスの工業化に関して、具体例で詳しく説明していました。
例えば、スーパーではレジ自体もセルフレジが増えてきます。
自分で登録をした方が、信頼感が増すのかもしれません。
1対多数では、その多数にお客が含まれます。
その信頼性を増すために、お客がその行動を行うのです。
そして、その行動は特にお客にとって嫌がられるものでもなく、望んでレジをしたいと思う場合もあります。
またセルフレジではなくても、あらたな信頼性のサービスは考えられます。
レジはセルフレジ。
でも、人との触れ合いは残したい。
そうした場合、他の面で信頼性を獲得しようとしたり、いっそレジとその信頼性を切り離して、新たな信頼性を獲得できる手段を考えたほうがいい、という発想にもなります。
切りはなして考えることによる新しいサービスの形です。
AIが進んで行って、機械的な作業は淘汰される、と言われています。
そうしたときに求められるのはこの信頼性や達成欲や親和性かもしれません。
となれば、めんどくささが優位になるような商品は売れるという一面もあります。
T・レビットはサービスを幅広く捉えなおしました。
しかし、一方でこのめんどくささや失敗や達成にお金を支払うことの請求によって、詐欺とも取られてしまうこともあります。
>>ブランディングと詐欺
そうなった場合、時代がどう容認してくれるのか。
届けたい人に届けるにはどうしたらいいのか。
そんなこともサービスを考える上では含まれます。
サービスの工業化とはーまとめ
最後に引用します。
サービス活動の工業化という概念がひとたび認識されると、-我々が何を行い、どう振る舞い、どこに向かうかといったことが大きく変わるはずである。古くからの難題が一挙に解決されるかもしれない。今後はますますサービス優先の経済になるだろう。そして、過去に製造工場中心の経済が新しく興ったときのように、生産性と生活水準の面で飛躍的な進歩をもたらすだろう。
とあります。
もとのsurveという意味とは違ったサービスの形です。
一対一ではなく、一対多数という関係。
仕えるというサービスの意味からそれから捉えられる様々な面に焦点を当てていく、という感じです。
辞書からでは捉えられない概念を考えていきます。
例えば、従来のサービスならば私から相手に与えていたと考えられるものでも、それに対して私が嬉しいという感情を抱いているならば、私もそのサービスを受け取っていると言う考え方もあります。
靴を磨いてお金を払う。
から、靴を磨かせてもらってお金を払う、というような。
一方的ではない形も、新しくサービスを考えていくには役立ちますね。
では、今日もお聞きいただいてありがとうございました。