「人間としての自覚」
第5節「中国思想」
①孔子の教え
- 孔子がでてきた背景
- 孔子の教え
参考文献 道徳を基礎づける(フランソワ・ジュリアン 中島隆博訳 志野好伸訳)、続・哲学用語図鑑(田中正人、斎藤哲也)、「哲学と宗教 全史」(出口明治)
孔子がでてきた背景
中国では紀元前11世紀ごろ、周(BC1046-BC771)が政権をにぎっていました。
周の初期統治はすばらしいとされましたが、春秋時代(BC771-BC453)になると秩序がくずれだしました。
でも、儒教の孟子の教えはルソー(民主主義)に似てる部分もあって、もろ刃の刃みたい!
孔子の思想の要点
「哲学と宗教 全史」(出口明治)から、孔子の思想の要点を抜粋します。
「周初、武王と成王、そして周公旦がいた時代は聖人政治が存在していた。
君主は君主らしく、閣僚は閣僚らしく、家臣は家臣らしく、そして農民は農民らしく、それぞれに互いを認めていた。
人と人の間では礼儀作法が守られ、社会の中には人々の行動やその評価についての拠るべき規範があって、平和が実現していた」
‐孔子はそのように考え、その時代の精神に戻れと主張しました。(p113)
では、孔子は具体的にどのようなことを説いたのでしょうか。
孔子の思想
孔子は儀礼を重要視しました。
儀礼は実際のイベントなどにおこなう儀式のこと。
- 礼⇒礼儀作法や社会規範
- 仁⇒人を愛する気持ち
- 孝⇒両親や祖先への敬愛
- 悌⇒兄や年長者への従順
日本文化は儒教が入ってる
他人に対しては克己・忠・恕・信という心のあり方を大事にします。
- 克己⇒自分のわがままを抑えること
- 忠⇒自分をいつわらない真心
- 恕⇒他人への思いやりの心
- 信⇒他人を欺かないこと
まずは孝と悌の2つが自然な感情だとして最も尊く、そしてその二つの気持ちを他の人間関係に広げていくことで、よりよい社会ができると説きました。
孔子の仁愛
孔子の説く仁愛は、キリスト教的愛(アガペー)のような無差別の人類愛とは異なります。
孝や悌といった自然な愛情を基本とするありかたで、呼ばれ方によっては差別愛です。
孔子の後、諸子百家たちの論争によって中国思想は哲学と言える論理体系が出来上がっていったみたい
「論語」
道
朝(あした)に道を聞かば、夕(ゆうべ)に死すとも可なり
もし朝に道を悟れたら、夕方に死んでもいいという意味。
道の大切さを説きました。
克己復礼(こっきふくれい)
己に勝ちて、礼に返るを、仁となす
自分の欲望に勝ち、礼に立ち返ることが仁だ、という意味。
克己復礼(こっきふくれい)を読み下したものです。
人生は楽しいものだ
学びて時にこれを習う。また説(よろこ)ばしからずや。
朋(とも)あり、遠方より来る。また楽しからずや。
人知らずしていきどおらず、また君子ならずや。
>>ブッダの教え
- 君子⇒仁の実現と自己の道徳的感性を目指す
- 小人⇒君子と比較されるときによく用いられる、自分の目先の利益のみを考える自己中心のつまらない人間
恕(他人への思いやりの心)
己の欲せざるところは人に施すことなかれ
自分がして欲しくないことを、人にしてはいけないという意味。
恕(他人への思いやりの心)。
キリスト教的な「自分がしてほしいことを人にするべき」という考え方とは違います。
>>イエスの教え
現実に関心を向ける
怪力乱神を語らず
「まだ現実もわからないのに死後のことなどわからない。
怪しげな力や神については語らない。」という意味。
孔子は超自然的なことは語りません。
これが宗教を基礎におく西洋との大きな違い。
宗教を基礎におかなくても、道徳が考えられるという視点になります。
天とは知るもの
吾、十有五にして学に志す。三十にして立つ。
四十にして惑わず、五十にして天命を知る。六十にして耳順(したが)う。
七十にして心の欲するところに従いて、矩(のり)をこえず。
「私が十五歳で学問を志した。三十歳で方向性が決まった。四十で惑うことがなくなった。
五十歳で自分の使命を知った。六十歳で何を聞いても受け入れられるようになった。
七十歳で心のおもむくままに行動しても、道徳から外れなくなった」という意味。
志学、而立、不惑、知命、耳順、従心の語源です。
ここで天がありますが、中国では天をすべての神の上にたつ超越的なもので、自然界・人間界を支配するものとして信仰していました。
例えば、政治がうまくいかないときは、天命によって悪い王から善い王に変わります。
「論語」はここまでにして、政治についてもふれます。
孔子の徳治主義
孔子は徳治主義を説きました。
すべての人間がまずみずからを修めて仁に向かい、人徳をそなえた人がその感化によって政治をおこなえば、社会の秩序は安定する。
つまり、法と刑罰による統治(法治主義)を退けました。
人徳を修めた人がその徳の感化によって人々を治めるという修己治人の考え方です。