ラングとはある言語の規則や文法のこと。(イメージだと辞書)
パロールとは個々の発話行為のこと。(話し言葉)
ラングとパロールをあわせた言語の全体像をランガージュと言います。
3つの意味に分けた理由を具体的に見ていきます。(哲学用語図鑑 参照)
ラングとパロールとは
問題です。
言語を説明してください。
私たちは自然と言語を使っているので、説明ができるのではないでしょうか。
辞書は言語を説明するものです。
言葉の用法がわからない場合には辞書をひきます。
けれど、私たちは辞書にはない言葉を使ったり、辞書に載っている意味をそのまま言うことができません。
辞書だけでは言語を説明できません。
人は言語を知っているからこそ話せているので、話し言葉が言語なのではないかと考えられます。
辞書がなくても意見を言い合えるし、ある程度は相互理解ができます。
そうなると、辞書がなんであるのかを考えてみます。
実際に話している言葉の用法が間違っていたり、造語を話している場合に意味が通じないのでその場合に基本に立ち返る意味で辞書を見ます。
話し言葉に加えてより他人と共通の理解ができるようにします。
辞書だけでも足りないし、話し言葉だけでも足りない。
なので、①②の答えを足した言語活動全体を言語と捉えればいいのではないかと浮かんできます。
②話し言葉(パロール)
③辞書と話し言葉を足した言語の全体像(ランガージュ)
ソシュールは意味を分けることで言語を説明しました。
ちなみに広辞苑では、ラングは言語、パロールは話し言葉、ランガージュは言語活動と記されています。
広辞苑に載るような一般的な言葉になっています。
けれど、ここで疑問がでてきます。
ラングが言語?
言語をラングだけで説明しています。
でも、パロールもあるはずなのにどうして?と疑問になります。
では、その理由を見ていきましょう。
ラングが言語だと言われる理由。
ソシュールの言語学では、ラングを分析することが重視されました。
ある言語の文法や規則の体系のことなので、国語のテストで言えば正解があります。
固定的なので辞書に載っていて、それをそのまま活用できます。
パロールは話し言葉であり、流動的なので学問としての正解が出しにくいのです。
なので、ソシュールは言語学として主にラングを分析していくことを説いたのです。
しかし、辞書も時代によって移り変わります。 辞書が変わるのはどのようなときでしょうか。
ラングとパロールから言葉を説明する
ラングとパロールの関係を、実際に辞書に追加された例から見てみましょう。
辞書にはこのような言葉が追加されていきます。
・歴史、研究の変化や発見。
・よく使われるようになった言葉。 「ちゃらい」「のりのり」など。
2018年、10年ぶりに改訂された広辞苑は、約一万語の項目が加わりました。
それに対し、数百項目は減らされています。
広辞苑編集者は、時代によって言葉がどのように使われているかを調べながら改正します。
「何が正しくて、何が間違いであるのかというのは、時代ごとにどのような言葉や言い方が多く使われていて、いかに不自然に思われないかというだけなんです。」 追加・削除された語句はどう選ばれた? 「広辞苑」10年ぶり大改訂の裏側を直撃インタビュー!
改訂するときは「正しい言葉」を考えません。
つまり、使われている言葉をそのまま受け入れているのです。
ラングは辞書、パロールは話し言葉、を略図にして見てみます。
ラング⇨パロール(辞書で知って使う)
ラング⇔パロール(相互に関係しあう)
時代によって辞書が変わるように、時代の知の枠組みは変化していきます。(エピステーメー)
古文を読んでわからないのは、本人の努力不足。
「現代の本を読んでわからないのは、書き手がアホだから」 が思い出されます。
「『教える』ということ 出口治明」
現代の枠組みの中で説明ができていないから、という意味でこの言葉は述べられています。
このラングとパロールの相互関係からいえば、現代でわからない文章はパロール(現代の話し言葉の使われ方)が理解できていないことになります。
ラングとパロールの関係はわかってきましたが、ここでランガージュとの関係もみていきましょう。
ラングとパロールとランガージュとの関係
辞書と話し言葉の関係は見えてきました。
さらに、その元を見てみます。
なぜ私たちは言葉を使うことができるようになったのでしょうか。
そもそもの出発点です。
例えば、言葉を学んでいくときに、子どもは会話を聞くことで語彙を増やしていきます。
①朝に「おはよう」を使っている。
②人と会うときに使っている。
③夜は他の言葉になる。
などといった用例を聞くことで、自然と「おはよう」の意味を身につけています。
この言語活動はランガージュです。
私たちは言葉を辞書で学ぶ前に知っているのです。
見たことがなかったり、経験したことがない用語は説明されてもわかりません。
百閒は一見にしかずと言われるほどです。
試しに子どもに「おはよう」を教えるとします。
初めは辞書から意味を引用するかもしれません。
その後に、その用語が理解できたかを調べるときにどうしますか?
私たちは実際に具体例をだして使ってもらうことで、意味理解ができているかを確認します。
ラング・パロール・ランガージュの3つが相互に関係してくることがわかります。
では、ラング・パロール・ランガージュの3つの関係を具体例を通して見ていきましょう。
ラングとパロールとランガージュの具体例
日常会話を例にしていきます。
ランガージュ例①「今日はヤバいですね!」
「今日はヤバいですね!」
このランガージュ(言語活動)の「ヤバい」を見てみましょう。
①ラング:「やばい」を辞書でひく。 危険やのめり込みそうといった意味。 文法も考慮。
②パロール:「やばい」を自分が使う場面を想像する。
③ランガージュ:その言葉を実際に使っている全体から意味を考察。
「今日は」や「!」を活動においてつけている意味も考察。
「今日はやることが多すぎて、企画を実行できない」ということを表していた。
今日はやることが多すぎて大変だという感情を説明したかったのだと判明。
このように3つはお互いに関係しあっています。
・「やばい」の元の意味と文法を考察
・時代の移り変わりによる言葉の使われ方を考察
・文脈から全体の意味を考察
といったことを、3つの用語を知ることで考察できるようになります。
ランガージュ例②「会話で事故った。」
「会話で事故った。」
①ラング:辞書で調べる。
「事故」=「普段とは違った悪い出来事」
「事故る」=「事故の動詞化。一般に交通事故を起こすことを言う。」
②パロール:日常でどのような使われ方をされているか。
「事故った」は若者言葉として広く流用され、何か失敗したときに使われているようだ。
③ランガージュ:前後の文脈から意味を考察
「会話をしている最中に、言ってはいけないことを言ってしまい、気まずい空気が流れた。」ということを表していたと判明。
このようなに3つを調べることで、内容を理解できます。
この3つを意識することで問いが立ちます。
私が使った言語は辞書の意味と一致しているのか。
日常の会話から自然に使えるようになっているものなのか。
日常でどのような場合に使うだろう。
1つの会話文に対して、ラング・パロール・ランガージュを意識できます。
ラングとパロールとはーまとめ
ラングとはある言語の規則や文法のこと。(イメージは辞書)
パロールとは個々の発話行為のこと。(話し言葉)
ラングとパロールをあわせた言語の全体像をランガージュ。(言語活動)
言語哲学者ソシュールによって3つの意味にわけられました。
ソシュールの言語学では、ラングを分析することが重視視されました。
広辞苑では言語をラングとしています。
パロールは日常を反映し、ラングと相互作用します。
ランガージュはラングとパロールの元になっています。
ラングとパロールとランガージュは相互に関係しています。
ソシュールの言語学が気になった方はこちらもどうぞ。
>>シニフィアンとシニフィエの違い