キリスト教の起源

キリスト教起源の物語|高校倫理2章2節キリスト教①

このブログの目的は、倫理を身近なものにすることです。
今回は
高校倫理第2章
「人間としての自覚」
第2節「キリスト教」
古代ユダヤ教からキリスト教の流れ
を扱っていきます。
2節に入りキリスト教を扱っていきます。
  • ユダヤ教とキリスト教
  • モーセの十戒
  • バビロン捕囚
  • メシア信仰
イエス・キリストの宣教活動は2年くらいだった!
イエス・キリストと聞くと、救世主のイメージが強いかもしれませんが、ソクラテスやプラトンなどの西洋哲学者よりも後にでてきた歴史上の人物です。
どのようなカリスマ性があったのでしょうか。
ここでは特に教科書と「ユダの謎 キリスト教の謎」(三田誠広)を参考にしていきます。

キリスト教起源の物語|ユダヤ教とキリスト教

キリスト教の前身はユダヤ教です。

ユダヤ教⇒世界を創造した全知全能の唯一神ヤハウェを信じるユダヤ教の民族宗教
ユダヤ・キリスト教(ヘブライズム)はギリシア思想(ヘレニズム)とともに、西洋思想の源流になりました。
キリストという言葉もその2つが混ざり合っています。
キリストという言葉はギリシア語で、これはヘブライ語のメシアを翻訳したもの。
キリスト「ギリシア語」=メシア「ヘブライ語」
キリスト(メシア)の意味は「油をそそがれた者」。
油をそそぐとは、神によって選ばれた王が祝福を受ける儀式なので、「神に祝福された王」という意味になります。
地中海といえばオリーブ。
オリーブはオイルの語源にもなっているよ

聖書

ユダヤ教の聖典は「旧約聖書」とよばれ、キリスト教の聖書は「旧約聖書」と「新約聖書」の2つからなります。
  • 旧約聖書⇒ヘブライ語
  • 新約聖書⇒ギリシア語

なぜ新約聖書がギリシア語で書かれているのかと言うと、当時の地中海沿岸地域では、ギリシア語が共通語だったから。

前回あつかったヘレニズム文化はローマによって支配されていくのですが、当時においても進んでいたヘレニズム文化は残っていたのです。

ローマの支配でも言葉はギリシア語
ユダヤ教からどのようにキリスト教が出てきたのか、まずはユダヤ教をたどっていきます。

キリスト教起源の物語|モーセの十戒

物語はアブラハム(予言者)から始まります。

アブラハムはユダヤ教・キリスト教・イスラム教を信仰する「啓典の民」の始祖です。

アブラハムの息子の一人がイサク、その子供がヤコブ

ヤコブはイスラエル(神と競う)と神から名前をもらいました。

ヤコブ=イスラエル。

イスラエルの元は人名!
イスラエルには12人の息子がいました。
その息子の嫡男(ちゃくなん、最初の男の子)ユダは他の兄弟と結託をして、下から2番目の頭の良い弟(ヨセフ)を奴隷に売り渡してしまいました。
奴隷としてエジプトに売られたヨセフ。
しかし、とても頭がよかったのでエジプトで大臣にまで登りつめました。
その頃、当の弟を売り払ったとされる残りの兄弟はパレスチナでは生活ができなくなります。
売ったヨセフを頼って、エジプトに移住。
しばらくはエジプトで暮らす兄弟たち。
しかし、その後は不遇の時代が続き、ついには全員が奴隷になってしまいました。

出エジプト

この窮地を救ったのが、伝説の英雄モーセです。

モーセはイスラエルの民を率いてエジプトを出て、故郷のカナン(パレスチナ)に帰ろうとします。

モーセは海を割ったとされる物語でも有名

その途中、モーセはシナイ山で神と契約を結びなおしました。(シナイ契約)

そこで出てきたのが十戒律法(トーラー)です。

神との契約

もともと、神はアブラハムとその子孫であるイスラエルの民を特別な民として選び、民族の繁栄を約束しています。(選民思想

神と人間との約束ごと(契約)です。

しかし、文書が残っていませんでした。

文書が残ってないと、何をすればいいのかわからない!

モーセがあらためて神と契約をむすびなおして、それを明文化したものがモーセの十戒と律法です。

十戒と律法を守って生きれば、神はイスラエルの民を守ってくれる。

契約が明確になったおかげで、一人ひとりが約束を守ることができるようになりました。

守れば救われる。

しかし、破れば破滅という罰を与えると信じられました(神の儀)。

十戒の内容は、ほかの神があってはならない、偶像崇拝の禁止、神の名をみだりに唱えてはならない、安息日を設ける、父母を敬う、殺してはいけない、姦淫してはいけない、盗んではいけない、隣人に関して偽証してはいけない、隣人の家を欲してはならない、の10項目。

時代によって解釈がかわったり、争いの元になったりもしました。

安息日だからスマホゲームする!
火をつけるのが禁止で、スマホの電源も火に例えられているよ

モーセとイスラエルの民の旅のゆくえ(教科書外)

モーセ自身はたどり着けなかったのですが、一緒に旅をしたイスラエルの民はエルサレム近くのエリコ(城壁都市)にたどり着きます。

実はここもエジプトに支配されていました。

なので、弱点をついて堅固な城壁都市を落とそうとします。

攻めないと移住できない…

当時、城壁の上には娼婦の住居がありました。

娼婦は卑しいものと考えられていたので、城壁の内部に住むことは許されていなかったのです。

しかし、城壁の外にいるのも不便なので、城壁の上の小屋に住まわされました。

そんな扱いされてたら怒る

娼婦たちはエジプト人の支配者を憎んでいたので、イスラエルの民とともに戦ってくれることになります。

娼婦の中にラハブという女性がいました。

ラハブの手引きによって城壁都市を陥落。

この陥落によって、この地に定住することができたのです。

ここを拠点として、イスラエルの民は繁栄していきます。

エリコの戦いは史実とは違うみたいだけど、「ヨシュア記」(聖書)にはそう書いてあるみたい!

ちなみに、ラハブはイエスの先祖です。

ユダ(イスラエルの嫡男)の子孫のサルモンとの間にボアズをもうけています。

キリスト教起源の物語|バビロン捕囚

移住したカナンの地では、争いが絶えませんでした。

イスラエル人とペリシテ人(地中海側から進出してきた民族)の戦いがあったのです。

ペリシテ人は古代パレスチナの民族という意味

そんな中、出てきたのがダビデ(羊飼いの少年)。

ダビデは予言で王であることが示されたので、油で浄められました。

ダビデの先祖はさっきでてきたボアズ。
予言によって王と言われた後継者!

イスラエル軍とペリシテ軍の戦闘中に、兄にお弁当を届けようとしたダビデ。

子どもなのにダビデは戦闘に巻き込まれてしまいます。

ダビデが投石をすると、敵であるペリシテ人の怪物のような戦士を撃破。

たちまちダビデは英雄にまつりあげられて、そこからユダヤ軍は大勝利!

ダビデ王とその子供ソロモン王の時代(前10世紀)が、ユダヤの歴史の頂点であったと言われるくらい繁栄していました。

ダビデ王によって各地が統一
イスラエル人はカナンの地にイスラエル王国を樹立。
エルサレムの都は信仰の中心地になりました。

イスラエル王国の滅亡

ところが。
イスラエル王国はその後、南北への分裂をへて滅びます。
  • 北は前722年にアッシリアによって滅ぼされる
  • 南のユダ王国は前586年真バビロニアによって滅ぼされる

バビロニアによって滅ぼされたエルサレムの住民は、バビロンに移住させられることになります。(バビロン捕囚

このバビロン捕囚以降をきっかけに、イスラエル人はユダヤ人と名乗るようになります。

先にイスラエル王国は北側を滅ぼされたのですが、北側を征服したアッシリアはそのままイスラエル王国と名乗っていたからです。
他民族がイスラエル王国の住民になっちゃったから、イスラエル人って呼べてしまうからだね!
北がイスラエル王国、南に逃れた人々は南をユダヤ王国と名乗りました。
北から南部に逃れたイスラエル人は自分たちが正統であると主張し、ユダヤ人と名乗ることにしたのです。
南の元の名前はユダ王国(ヤコブの嫡男のユダが統治していたという意味)。
ユダが転じてユダヤ

なぜユダヤ人没落がはじまったのか

なぜソロモン王を境に没落が始まったかと言うと、父ダビデ王が部下の妻に一目ぼれ。
部下を戦争の最前線に送り出して死亡させ、妻を手に入れたから、と一説に言われています。
十戒の10個目、「隣人の家を欲してはならない」の細かい解釈事項として、他人の妻を画策して奪うことは禁止事項です。
なんでそんなことがわかったの?!
なぜ規則をやぶったことがわかるかといえば、預言者の存在です。
預言者⇒神の意志(言葉)を預かり人々に伝える者
イザヤやエレミアなどの預言者が、ユダヤ人が神にそむいたとしてきびしく非難しました。
  • ヤハウェ以外の神を求めた
  • 偶像崇拝をおこなった
  • 快楽にふけった
  • 貧しいものを虐待した

神に選ばれた民にふさわしくないあり方だと述べたのです。

規則違反には厳しい罰が待っている。
でも、偽預言者は死罪になっている
預言者は多くいたのですが、律法に関わることは預言を聞き入れることも聞き入れないことも死活問題です。
例えば、イエスに洗礼を与えた洗礼者ヨハネ(予言者)は、領主の結婚が律法を破っていると非難したために捕えられてしまいました。
神との契約は、律法を守ってこそのことなので、それは衰退する理由になります。

キリスト教起源の物語|キリスト(メシア)への期待

預言者たちの努力もむなしく、ユダヤ人は国を失ってしまいました。

ローマに支配されたユダヤは植民地化して、奴隷の屈辱をうけています。

その頃、預言者たちは奴隷におちたユダヤ人を励ますために、ある預言をくりかえしました。

「いつの日かダビデの再来が出現して、ユダヤに再び繁栄をもたらす」

この希望はメシア信仰といわれています。

いつの日か救世主(メシア)があらわれてユダヤ人を異民族の支配から解放してくれる、と願っていました。

メシア=キリストだったね!

ユダヤ人の社会矛盾

当時、ユダヤの社会は矛盾を抱えていました。

十戒や律法を厳格に守ることをパリサイ派の律法学者は説きます。

神との契約を守っていれば、繁栄をもたらされる。

しかし、社会には貧富の差、職業の差別、病気などがあり、律法を守りたくても守れない人々がでてきたからです。

律法は救いよりもむしろ抑圧。

こう捉えられてきた背景に、イエスが登場します。

安息日に病人の看病をするのは律法に違反する…
あっ、イエスが病気を治してくれた!

イエスの言行は「新約聖書」に伝えられています。

イエスは律法を守ることを強調しながらも、その根本精神のほうが大事だと説いたのです。

病人を見捨てることよりも、根本精神にかえって助けることを選んだんだね

次回はイエスの思想と活動を取り扱っていきます。
>>イエスの教え②

全4回キリスト教篇
キリスト教起源の物語①
>>イエスの教え②
>>キリスト教の誕生③
>>キリスト教の発展④

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