「人間としての自覚」
第2節「キリスト教」
①古代ユダヤ教からキリスト教の流れ
- ユダヤ教とキリスト教
- モーセの十戒
- バビロン捕囚
- メシア信仰
キリスト教起源の物語|ユダヤ教とキリスト教
キリスト教の前身はユダヤ教です。
オリーブはオイルの語源にもなっているよ
聖書
- 旧約聖書⇒ヘブライ語
- 新約聖書⇒ギリシア語
なぜ新約聖書がギリシア語で書かれているのかと言うと、当時の地中海沿岸地域では、ギリシア語が共通語だったから。
前回あつかったヘレニズム文化はローマによって支配されていくのですが、当時においても進んでいたヘレニズム文化は残っていたのです。
キリスト教起源の物語|モーセの十戒
物語はアブラハム(予言者)から始まります。
アブラハムはユダヤ教・キリスト教・イスラム教を信仰する「啓典の民」の始祖です。
アブラハムの息子の一人がイサク、その子供がヤコブ。
ヤコブはイスラエル(神と競う)と神から名前をもらいました。
ヤコブ=イスラエル。
出エジプト
この窮地を救ったのが、伝説の英雄モーセです。
モーセはイスラエルの民を率いてエジプトを出て、故郷のカナン(パレスチナ)に帰ろうとします。
その途中、モーセはシナイ山で神と契約を結びなおしました。(シナイ契約)
そこで出てきたのが十戒と律法(トーラー)です。
神との契約
もともと、神はアブラハムとその子孫であるイスラエルの民を特別な民として選び、民族の繁栄を約束しています。(選民思想)
神と人間との約束ごと(契約)です。
しかし、文書が残っていませんでした。
モーセがあらためて神と契約をむすびなおして、それを明文化したものがモーセの十戒と律法です。
十戒と律法を守って生きれば、神はイスラエルの民を守ってくれる。
契約が明確になったおかげで、一人ひとりが約束を守ることができるようになりました。
守れば救われる。
しかし、破れば破滅という罰を与えると信じられました(神の儀)。
十戒の内容は、ほかの神があってはならない、偶像崇拝の禁止、神の名をみだりに唱えてはならない、安息日を設ける、父母を敬う、殺してはいけない、姦淫してはいけない、盗んではいけない、隣人に関して偽証してはいけない、隣人の家を欲してはならない、の10項目。
時代によって解釈がかわったり、争いの元になったりもしました。
モーセとイスラエルの民の旅のゆくえ(教科書外)
モーセ自身はたどり着けなかったのですが、一緒に旅をしたイスラエルの民はエルサレム近くのエリコ(城壁都市)にたどり着きます。
実はここもエジプトに支配されていました。
なので、弱点をついて堅固な城壁都市を落とそうとします。
当時、城壁の上には娼婦の住居がありました。
娼婦は卑しいものと考えられていたので、城壁の内部に住むことは許されていなかったのです。
しかし、城壁の外にいるのも不便なので、城壁の上の小屋に住まわされました。
娼婦たちはエジプト人の支配者を憎んでいたので、イスラエルの民とともに戦ってくれることになります。
娼婦の中にラハブという女性がいました。
ラハブの手引きによって城壁都市を陥落。
この陥落によって、この地に定住することができたのです。
ここを拠点として、イスラエルの民は繁栄していきます。
ちなみに、ラハブはイエスの先祖です。
ユダ(イスラエルの嫡男)の子孫のサルモンとの間にボアズをもうけています。
キリスト教起源の物語|バビロン捕囚
移住したカナンの地では、争いが絶えませんでした。
イスラエル人とペリシテ人(地中海側から進出してきた民族)の戦いがあったのです。
そんな中、出てきたのがダビデ(羊飼いの少年)。
ダビデは予言で王であることが示されたので、油で浄められました。
予言によって王と言われた後継者!
イスラエル軍とペリシテ軍の戦闘中に、兄にお弁当を届けようとしたダビデ。
子どもなのにダビデは戦闘に巻き込まれてしまいます。
ダビデが投石をすると、敵であるペリシテ人の怪物のような戦士を撃破。
たちまちダビデは英雄にまつりあげられて、そこからユダヤ軍は大勝利!
ダビデ王とその子供ソロモン王の時代(前10世紀)が、ユダヤの歴史の頂点であったと言われるくらい繁栄していました。
イスラエル王国の滅亡
- 北は前722年にアッシリアによって滅ぼされる
- 南のユダ王国は前586年真バビロニアによって滅ぼされる
バビロニアによって滅ぼされたエルサレムの住民は、バビロンに移住させられることになります。(バビロン捕囚)
このバビロン捕囚以降をきっかけに、イスラエル人はユダヤ人と名乗るようになります。
ユダが転じてユダヤ
なぜユダヤ人没落がはじまったのか
- ヤハウェ以外の神を求めた
- 偶像崇拝をおこなった
- 快楽にふけった
- 貧しいものを虐待した
神に選ばれた民にふさわしくないあり方だと述べたのです。
でも、偽預言者は死罪になっている
キリスト教起源の物語|キリスト(メシア)への期待
預言者たちの努力もむなしく、ユダヤ人は国を失ってしまいました。
ローマに支配されたユダヤは植民地化して、奴隷の屈辱をうけています。
その頃、預言者たちは奴隷におちたユダヤ人を励ますために、ある預言をくりかえしました。
「いつの日かダビデの再来が出現して、ユダヤに再び繁栄をもたらす」
この希望はメシア信仰といわれています。
いつの日か救世主(メシア)があらわれてユダヤ人を異民族の支配から解放してくれる、と願っていました。
ユダヤ人の社会矛盾
当時、ユダヤの社会は矛盾を抱えていました。
十戒や律法を厳格に守ることをパリサイ派の律法学者は説きます。
神との契約を守っていれば、繁栄をもたらされる。
しかし、社会には貧富の差、職業の差別、病気などがあり、律法を守りたくても守れない人々がでてきたからです。
律法は救いよりもむしろ抑圧。
こう捉えられてきた背景に、イエスが登場します。
イエスの言行は「新約聖書」に伝えられています。
イエスは律法を守ることを強調しながらも、その根本精神のほうが大事だと説いたのです。
次回はイエスの思想と活動を取り扱っていきます。
>>イエスの教え②
全4回キリスト教篇
キリスト教起源の物語①
>>イエスの教え②
>>キリスト教の誕生③
>>キリスト教の発展④