「人間としての自覚」
第3節「イスラーム」
①イスラームの起源ムハンマドの物語
- ムハンマドの出てきた背景
- ムハンマドの聖遷(せいせん)
- クルアーンについて
(太字は倫理の教科書でも重要な言葉です。
「マホメット」「イスラーム文化」(井筒俊彦)、「世界史劇場 イスラーム世界の起源」(神野正史)を参考にしています。本によっては違う書かれ方がしてあります。)
ムハンマドからイスラームが誕生
時代背景から見ていきましょう。
ムハンマドが出てくる前の時代は、ジャーヒリーヤ(光がない時代という意味、暗黒時代)と呼ばれています。
暗黒時代
ムハンマドがでてきたメッカやアラビア半島周辺は、もともとは砂漠の民である遊牧民が暮らしていました。
特にアラビア砂漠の民においては部族が大事にされていました。
血のつながりが大事にされ、部族的血縁関係がないものには厳しい態度がとられていたのです。
例えばこの詩。
「敵にあだされても彼らは怒らない、悪意に報いるに善意を以てする。」
(「マホメット」井筒俊彦 p42)
つまり、彼らは敵に殴られても怒りません。
敵に悪いことされても許せるってすごい!(イエスの教え)
商人の出現
572年から50年以上にわたって「ビザンツ-ササン戦争」が繰り広げられました。
その戦線はちょうどシルクロード(有名な貿易陸路)を立ち塞がるようになっていたのです。
商人は困りました。
戦争の地域を避けるのには、海路を渡っていかなければいけません。
けれど、かなりの遠回りになるし、海には海賊もでます。
何か思うところがあったのか、お金と暇ができたからなのか…
ムハンマド預言者になる
瞑想生活15年目。
ムハンマドが40歳のころ、いつものように瞑想していると、突然目の前が明るくなりました。
アッラーの大天使ジブリール(ガブリエル)が立っていたのです。
ムハンマドは大天使に「読め」といわれてお告げ(啓示)を受けます。
ムハンマドの聖遷
クライシュ族は中継貿易でも富を築きましたが、他にもメッカでカーバ神殿の経営を行っていました。
カーバ神殿には360柱もの先祖伝来の神々の像があります。
崇拝者が集まることで商売が成りたっていました。
歯には歯を…
聖遷(ヒジュラ)⇒ムハンマドとムスリムがメッカからメディナへ移住した出来事
なぜ聖遷(ヒジュラ)は重要なのか
メディナへの聖遷によってイスラーム共同体であるウンマが形成されました。
イスラーム共同体は一つの社会を表します。
後のイスラーム社会や国家の原型なのです。
ムハンマドは宗教上のリーダーだけでなく、政治上のリーダーにもなりました。
ウンマは初め小国家。
メッカvsメディナの戦いに発展します。(624年バドルの戦い)
- メッカ⇒クライシュ族率いる約1000人
- メディナ⇒ムハンマドを受け入れたメディナ側約300人
メッカからメディナは経済封鎖をしかけられるのですが、ムハンマドは軍を編成してメッカの隊商を襲撃。
ムハンマドはメッカの井戸を抑えたり、軍の団結を強くしてメッカとの戦いに勝利します。
ポイント
預言者にはよく奇跡がおこります。
小さな戦力で大軍に勝つのも、神のお告げがあってこそ。
勝てば官軍という言葉どおりに、神から選ばれたので勝ったということになります。
他の奇跡としては、聖遷の途中。
ムハンマドが洞窟に隠れているところが見つかりそうになる、絶体絶命のエピソードがあります。
敵が洞窟を発見したのですが、入り口には蜘蛛の巣と、卵を温めている鳩がいました。
敵はここに人が入った形跡がないとして中を調べなかったので、ムハンマドは難を逃れました。
メッカを征服
630年には完全にメッカを征服。
そのときに、カーバ神殿にある360柱の神像が破壊されました。
後に、メッカとメディナは二大聖地になります。
ムハンマドがお告げで聞いた岩を囲った「岩のドーム」が後に建てられたよ
(もとは「神の道における努力」を意味する)
聖戦で戦死すれば、天国に行けると言われてる
イスラームはムハンマドの頃にすでに政治とくっついています。
国策によってイスラームになれば税金を払わなくてよい、ということもあり、信者が増えていく一因にもなりました。
支配が厳しくなかったことも広がる要因になった
ムハンマドのイスラームにおける意味
ムハンマドが当時イスラームの教えを唱えた背景に、暗黒時代との意味転換があります。
- 暗黒時代⇒身内に甘く、他部族に厳しい
- ムハンマド⇒神のまえではみんなが平等
「わが部族の中でかつてこれほど賤劣なことをあえてした者はなかった。
われらの中でこれほど血のつながりを無残にも断ち切った男はなかった」
(「マホメット」p30)
人間の高貴さは生れや血統から来るものではなく、ただひとえに敬神の念の深さによって計られる
(「マホメット」p30)
入ると何をするんだろう?
イスラームで守るべきクルアーン(コーラン)
イスラームになるには、クルアーン(コーラン)に書かれている具体的な生活上の指示を守ります。
読まなくても実行できる教え
- クルアーンにおける食・結婚・離婚・相続・利子の禁止などの定め
- ムハンマドの模範的慣行(スンナ)
- 共同体の取り決め
そうした中でもっとも基本になるのが六信五行です。
- 六信は「アッラー、天使、啓典、使徒(預言者)、来世、予定(定命)」を信じること。(信仰上の義務)
- 五行は「信仰告白、礼拝、喜捨、断食、巡礼」(行為上の義務)
イスラームでは平等と同胞愛が重要です。
貧しい人のために喜捨(ザカート)をおこない、飢える人の気持ちがわかるために断食(サウム)をおこないます。