ゴッホと芸術

ゴッホと芸術|高校倫理2章6節「芸術と人生」

このブログの目的は、倫理を身近なものにすることです。
高校倫理 新訂版 平成29年検定済み 実教出版株式会社)を教科書としてベースにしています。
今回は
高校倫理第2章
「人間としての自覚」
第6節「芸術と人生」
ゴッホと芸術
を扱っていきます。
今回は「芸術と人生」と言う節で、特にゴッホについて扱っていきます。
「美しい」「嬉しい」「悲しい」「楽しい」……。
一瞬一瞬に生身の体で感動することによって、人は、自己の価値基準を生み出し、現実を現実として自分のものにできるのである。
それが「生きる」ということである。
だからこそ、本当の感動を知っている人は、強い。
(「すべては音楽から生まれる」p18 茂木健一郎)
人間の精神には真・聖・美などの価値を追求する働きがあります。
脳科学者茂木さんは各個人がもつクオリアから芸術性を説明していました。
>>クオリアをわかりやすく
アーティストというのは、「なにかをキャッチする力」を持った人間です。
身のまわりで起きていることを、常に観察している人たちなのです。
加えて、アーティストというのは、生きるために他者を必要としている人たちでもあります。
だから、作品を通して「なにか」を提案するのです。
であればそれは、必然的に、人が「生きやすくするための提案」であるはずです。
(「すべては音楽から生まれる」p164 茂木健一郎)
これらをゴッホから見てみましょう。
今回は画像を多く載せていくよ!
簡略化して紹介
ブログ内容
  • ゴッホの人生
  • 芸術家の紹介
主な参考文献 「図解 はじめての絵画

ゴッホの人生

フィンセント・ファン・ゴッホ(1853-1890)は、オランダの画家。

ゴッホは2100枚以上の作品を描いたといわれ、そのうち自画像を40枚ほど描いています。

麦わら帽子がトレードマーク
細かく経歴をたどるわけではありませんが、ゴッホの生涯は「暗い」と言えるものでした。
孤独な社会的行動、狭い興味関心、よくかんしゃくを起こすなど、友人関係もうまくいきません。
asd(自閉スペクトラム障害)だったんじゃないかって説もある
>>asdとは

ゴッホとキリスト教

ゴッホの父は牧師でした。
その影響を受けて、ゴッホは一時期その活動に精力的に取り組んでいたこともあります。
「ゴッホ 星月夜」
(青い色はキリスト、黄色い色は天使を表現。
‐それらによって神を信じる心を力強く表しているといわれています。
ただし、この作品は後期に描いたもの)
宗教心は持っていたのですが、ゴッホは恋愛関係や意見の食い違いから両親に勘当されてしまいました。
そのときに唯一ゴッホを助けていたのが弟のテオです。
弟(テオ)が金銭的な支えをしてくれた

ゴッホとゴーギャン

ゴッホは画家ゴーギャンと共同生活をすることになります。

ゴーギャンに負けじと描いた頃の作品はこちら。

「ゴッホ ひまわり」

(厚塗りで伝わるヒマワリのぼってり感が特徴的)

 

「ゴッホ 夜のカフェテラス」

(当時の人々は夜をあまり描かなかったと言われています。
その中でランプの光と静かな星空が印象的な作品。
左はその場所だろうイメージ写真)

ゴッホはゴーギャンと性格が合わず、二か月で共同生活は破綻。

ゴーギャンとの喧嘩の後に、ゴッホは自分の左耳を切り落とす事件をおこしました。

左耳は行きつけの娼婦の元におくった
事件を経由して、ゴッホは精神病院に収容されました。

ゴッホの悩み

精神病院に収容されたのですが、ゴッホは絵を描かずにはいられませんでした。

(アルル病院の写真)

アルル病院や、他の療養所などで約一年は療養生活を送ったと言われています。

病院にいるゴッホを支援するテオですが、その頃テオ自身にも不幸が襲います。

仕事がうまくいかず、自分の息子も病気になってしまいました。

そんな感情を、テオはゴッホについぶつけてしまいます。

私のせいで弟は苦しんでいるのか…

ゴッホの自殺

ゴッホは拳銃で自殺したと一説にいわれています。(諸説あり)

「泣いてはいけない、ぼくはみんなのためにと思ってしたのだ」
死ぬ直前にこのような言葉を残していると言われています。
ゴッホの死からわずか半年後、テオはすっかり参ってしまい病院で没したと言われています。
ゴッホの絵はゴッホが生きていたときには一枚しか売れなかったそうですが(誇張あり)、今ではもっとも価値の高い絵の一つになっています。
絵を売りに来たゴッホの身なりが汚かったり臭くて、描いた絵が焼却されてしまったことがあるみたい

ゴッホに影響された人

ゴッホはさまざまな人物に影響を与えました。

ゴッホの死後20年後、ヘレーネ・クレラーはゴッホの絵を集めて美術館を設立。

彼女はゴッホの絵の虜になったのです。

絵から伝わるのは感動。

ゴッホの悲しさ、人間らしさ、同じ悩み。

人間の劣等感や「負」の部分が強い共感をつくったりする

ヘレーネはゴッホの才能を正しく評価した初期のコレクターの一人です。

彼女も死後に評価されました。

芸術は世代を超えて伝わっていく…

ゴッホから学ぶ芸術とは何か

私はある小論文の題材からゴッホに興味を持ったことがあります。

「人に迷惑をかけてはなぜいけないのか?」

この例題の一つに、ゴッホの人生があげられていました。

ゴッホの人生をテオの視点から見てみれば、「迷惑」そうです。

「迷惑」だと思われる点

  • 援助するも、トラブルの連続(ゴーギャンとの破局、耳切り取り事件)
  • 少しでも送金が遅れると自分の芸術を損なうものだと言ってテオをなじる
  • 送金が少なかった時には食費を切り詰めて体を酷使したため、歯は次々欠け、体も衰弱

それにもかかわらず、ゴッホが亡くなるとすぐにテオも後を追うように死んでしまいました。

ただ迷惑をこうむっていたわけではない、と解釈できます。

ゴッホとテオのお墓は隣に並んでる

ゴッホの絵は見るものに感動を与えます。

絵だけじゃなくて、ストーリーや手紙内容を知るとさらに引き込まれたりする

芸術を見る他の観点

このブログでも芸術についてさまざまな考察をしています。

歴史的にはどのようなものを芸術品とみなしてきたのでしょうか?

話題になった「13歳からのアート思考」(末永幸歩 2020)は芸術の歴史を語ります。
>>アート思考の要約

芸術品は目でみて美しい、という時期もあったのですが、発見や斬新さが芸術品になる、という美の価値観の移り変わりでもあります。

セザンヌ

「セザンヌ 松の木のあるサント・ヴィクトワール山」

(故郷の風景を描いた絵。
セザンヌは「自然に即して」絵を描くことの重要性を述べている。
日本の浮世絵に影響をうけたもの)

ピカソ

「ピカソの絵」

ピカソは写実も上手だということは左の絵からわかりますが、あえて表現を自由にした絵を描きました。

絵の描き方に決まりはない、そう考えていたそうです。

ピカソは恋多き人。

彼(ピカソ)はすべてのことを深底まで知らねば気がすまず、その中に何が隠れているか見ようとしてそれを壊してしまうのです。
「愛と欲望の世界史」p112 (堀江宏樹)

ピカソは絵を描くために必要なインスピレーションを湧き起こさせるために恋をした、とみられる面もあります。

他にも、本物の芸術とは何かを説いたベンヤミン。
>>本物と偽物とは

芸術とイデアとを関連させて考えた哲学者にショーペンハウアー。
>>ショーペンハウアーにおけるプラトンのイデアとは

絵画、哲学、宗教、音楽、文学…さまざまな芸術品は、私たちの美的感受性をゆたかにしたり、他人の心を感じ取らせたりします。

ショーペンハウアーはこの芸術を感じ取る能力を「天才性」と表現していました。
>>天才と秀才の違いとは「ゲンロン戦記」から

芸術品は人生の深まりを感じさせてくれる…
今回はゴッホと芸術について扱いました。
次回は第3章1節「古代日本人の思想」に入っていきます。
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