青年期の課題

青年期の課題を心理学から説明|高校倫理1章③

このブログの目的は、倫理を身近なものにすることです。
今回は
高校倫理第1章「青年期の課題と自己形成」
第1節「青年期の意義」 ③青年期の課題とは
を扱っていきます。
倫理は自分の生き方を学ぶ学問でもあります。
前回②「青年期とは」をやりました。
>>青年期とは
青年期は社会的に成熟するための期間
青年期の課題は心理学者エリクソンから言えばアイデンティティの確立
アイデンティティが確立していないということは、集団意識がなく自信も持てないけれど特定の視点が持てる境界人(マージナル‐マン)
青年期はとても不安定なのです。
今回はその青年期の課題や乗り切り方をやっていきます。
不安なときにはどうしたらいいのか…ここでは心理学という武器を提供!
ブログの構成
  • フロイトの無意識
  • マズローの欲求段階
  • レヴィンの葛藤

青年期の不安がなぜ不安なのか?という問いがあります。

人は知らないことを不安に感じやすいのです。

知れば漠然な不安が具体的になるから解決策が見つかるかも

それを心理学に落とし込むことで、不安を解決していきましょう!

青年期の課題におけるフロイトの無意識

精神分析学の祖フロイトは無意識を説きました。

人の行動は無意識に支配されている。

フロイトは心を氷山にたとえて、意識は水面上に浮かぶ部分で、無意識は水面下でみることのできない大部分だと言ったのです。

氷山の一角

下にたくさん氷がありそう…
無意識に自己を守るしくみを防衛機能といいます。
意識的な努力では気がつくことができない仕組みが9個あります。
抑圧、合理化、同一視、投射、反動形成、逃避、退行、代償、昇華
なぜ無意識な防衛機能をここで意識上にあげるのか?
どうして倫理で無意識を意識的にしようとしているのかな?
それは、防衛機能によってのみ解決がはかられることを避けるため、です。
例えば、合理化。

合理化の例

合理化⇒もっともらしい理由や理屈をつけて正当化する
あるキツネが木の上にぶどうを発見します。
美味しそう!
キツネはとろうとしますが、木に登れませんでした。
キツネは思います。
「あのブドウはすっぱいに違いない!採るだけ損だ!」
この話はイソップ物語にでてくる「すっぱいブドウ」。
とても美味しいかもしれないブドウを、自分の認知を修正することであきらめてしまうのです。
もしこの時に自分の防衛機能による合理化だとわかっていたとしたら?
それがわかっているあなたが主人公だとしたら、話が変わったかもしれませんね。
この防衛機能は人間に欲求があることを前提としています。
では、人間にはどのような欲求があると言われているのでしょうか?

青年期の課題におけるマズローの欲求段階

生きるために欲求を持つのが人間。

欲求は生理的欲求(一次的欲求)社会的欲求(二次的欲求)があります。

アメリカの心理学者マズローは人の欲求を5段階に分類しました。

下の欲求が満たされるとだんだんと上の欲求に上がっていきます。

マズローの欲求階層説

  1. 生理的欲求
  2. 安全の欲求
  3. 愛情と所属の欲求
  4. 承認の欲求
  5. 自己実現の欲求

マズローは①から④を基本的欲求(欠乏欲求)、⑤を成長欲求と区別しました。

自己実現の欲求

青年期の課題の一つはアイデンティティの確立。
マズローの⑤自己実現の欲求の解決の仕方は、自分を知る(アイデンティティ)にかかわってきます。
自己実現のために何かに無心で打ち込んでいるとき。
夢中になっているとき。
本を読んでいて気が付いたら真夜中だった、映画をみていたら無意識に涙していた、私はこの行為に対して夢中になれる。
至高体験をしていると感じる。
至高体験⇒我を忘れて(無心で)何かに没頭している歓喜の体験(フロー体験)
自分が歓喜な体験をできるもの、得意なものは、自分の中にある可能性を最大限に発揮するものです。
夢中になれるものは自己を形成してる!
 自分らしさや自己の確立ができないことをアイデンティティの危機状態(スチューデントアパシーなど)といいます。
マズローは人間の自己実現の欲求を説き、さらに自己実現を達成するヒント(至高体験)を説きました。

青年期の課題における葛藤

人間には欲求がありますが、それが叶えられないと欲求不満(フラストレーション)になります。

欲求不満はだれにでもおこる。

選択という葛藤(コンフリクト)を説いたのはマージナル‐マンを説いた心理学者レヴィンです。

レヴィンはコンフリクトを3つのパターンに分けました。

レヴィンのコンフリクト3パターン

  • 同じ日にパーティーが2つあって、どちらかにしか行けない!
    これは接近(+)と接近(+)でどちらも好ましい選択。
    どちらかに決めてしまえば、葛藤はなくなっていくとされています。
  • 宿題をしたくないけど、先生に怒られるのも嫌!
    これは回避(-)と回避(-)のどちらも嫌な選択。
    一方を回避すると、もう一方におちいってしまう状態です。
  • 食べたいけど太りたくない!
    これは接近(+)と回避(-)の選択。
    一つの目標が魅力的な面とそうでない面を持つので、実行に移せない状態です。

葛藤状態にあるとして、それを分析することは欲求不満に耐える力(欲求不満耐性)につながります。

倫理をやっていくと出てきますが、選択を決める絶望を語った哲学者は実存主義の祖キルケゴールです。
>>アニメfateから学ぶ実存主義

心理学的解釈における行動

無意識を意識にするとどのような解釈ができるのか、現代の問題として解釈してみます。

教科書には載っていない個所なので、ここからは興味のある方だけどうぞ。

例えば、フランスの国旗。

哲学を重視するフランスの国旗は「自由・平等・友愛」をあらわした3色です。
人間は無意識でもこの3つをとても重視している、と取れます。

自由の妨害

自由を妨害するとどのような心理的な反応がおこるといわれているでしょうか?
心理的リアクタンスという自由を取り戻そうとする働きがうまれます。
選択が2つあったのに、1つにされた!
こっちをとろうとしてたけど、選択の自由が侵害されたからそれを取り戻したい!!
自由は人間の無意識的なものに組み込まれています。

平等の侵害

社会心理学者によって現在でも広く研究されている公正世界仮説。
>>4枚カード問題

世界は平等なのでそれを侵害されると怒る、という思い込み(または認知バイアス)が人間にあるという仮説です。

たとえば、サルの片方にブドウを与えて、片方にキュウリを与える。

キュウリを与えられた方は、報酬があるにもかかわらず怒り出します。
不平等なのは許せない、という心境がサルからもうかがえるのです。
これはサルですが、人間でも最後通牒(つうちょう)ゲームという実験があります。
>>ゲーム理論の思考法
人間は相手より劣った扱いをされている、平等ではない、と思うことによって不快感がでてくるということが実験よって明らかになってきました。

友愛

友愛は倫理で学ぶべきものとしてアリストテレスの言葉を借りて紹介しました。
>>青年期とは
倫理は自分の生き方を学ぶので、他者との関係を学んでいく学問です。
自由、平等、友愛を心理学からみることによって、それが国旗に掲げられた理由も見えてきます。
第1節②青年期とは何かから③青年期の課題を今回見てきました。
次回は第2節「青年期の課題」④パーソナリティの形成を取り扱っていきます。
>>パーソナリティの形成
心理学的に意識して解釈していくと相手を理解しやすい!
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