ポスト構造主義とは

ポスト構造主義とは何か|構造主義後の思想の流れ

  • 2022年10月25日
  • 2022年10月25日
  • 哲学
ポスト構造主義とは、フランスを中心に構造主義のに登場した思想の流れです。
(哲学用語図鑑 参照)

固定的なものの見方を乗り越えるような特徴があります

構造主義は1960年代から主流になってきた考え方。

ポスト構造主義は特に構造主義を指しているわけではなく、時代の流れとして構造主義の後に登場した思想になります。

アメリカの学会で使われ、明確な定義や体系を示した論文は未だ存在していないとされています。

簡単に書くと

実存主義 ⇨ 構造主義 ⇨ ポスト構造主義

という登場の順になっています。

固定的なものの見方を乗り越える思想(ポスト構造主義)とはどのようなものなのか、詳しく見ていきましょう。

構造主義の後だからポスト構造主義っていうのか

ポスト構造主義とは

ポスト構造主義には、固定的なものの見方を乗り越えるという点において類似性があります

例としては、フーコー、デリダ、ボードリヤール、ドゥルーズなどの思想を言います。

大まかに見てみましょう。

ミシェル・フーコーの場合

ミシェル・フーコー(1926~1984)はエピステーメーを説きました

エピステーメーとは知の枠組みのことで、時代によって考え方が変わります

例えば、戦争時代に贅沢は敵と思われていたことが、消費社会においては経済を発展させる元と捉えられることです。

贅沢はだめ(戦争下)⇒贅沢で経済発展(消費社会)

フーコーは人の思考は進歩してきたのではなく、各時代に特有なものであると考えました。

各時代の知の枠組みがあるのです。

時代によって思想は変わり、その方向は前進という一方方向ではありません。

時代の思想も変わり、その時代に影響されて私の考え方も変わるという点でポスト構造主義になります

いつでもその時代の思想を解き明かそうとしています。

砂に書いて消えちゃった「人間」をまた定義しようとしてる
>>生の権力とは

ジャック・デリダの場合

ジャック・デリダ(1930~2004)は二項対立を説きました

善と悪、真と偽、話し言葉と書き言葉、などと言った対立に優劣はないと指摘したのです。

例えば、話し言葉で何かを伝えようとしたときに、その元になっていたのは書き言葉だと気がつくかもしれません。

その逆もあって、書き言葉で何かを伝えようとしたときに、その元が話し言葉だったということはよくあります。

⇨ 話し言葉 ⇨ 書き言葉 ⇨ 話し言葉 ⇨ 書き言葉 ⇨・・・

といった図が出来上がるのです。

すると、どちらが優劣か言えなくなります。

物事の優劣を固定化させない点でポスト構造主義になります

構造主義で固定化されたものを反転、反転と動かす

ジャン・ボードリヤールの場合

ジャン・ボードリヤール(1929~2007)は差異の原理を説きました

消費社会において個人の実体は、差異への欲望だと言うのです。

私たちは商品の価値を他とは違うわずかな差異に見ています。

例えば、

  • 最新のスマホに満足していたとしても、新しいのが来ればそちらの方がいいと思う
  • エコノミークラスの飛行機に乗っていれば、ファーストクラスが羨ましくなる
  • ブランド物の価値の差

この差異は絶えず変化しています。

新しいスマホ、と思ったらもう次のスマホ

価値を固定化させないというポスト構造主義になります

ざっくりとポスト構造主義を見てきました。

ポスト構造主義への疑問

今までの固定化された次の思想として、ポスト構造主義が生まれました。

しかし、疑問が浮かびます。

哲学は否定の連続ではないのかと。

固定を否定している思想はポスト構造主義の他にも数多く存在しています。

では、その中でなにがポスト構造主義と呼ばれているのでしょうか

詳しく見ていきます。

固定化された思想とポスト構造主義

今まで存在していた思想を考察すると、固定化されている思想が多い事に気がつきます。

まずは、構造主義を例に見ていきます。

構造主義は、社会や文化という構造があって個人の思想は構造に規定されていると考えます。

構造主義⇒社会や文化という構造があって、個人の思想は構造に規定される

代表的な人物はレヴィ=ストロース(1908~2009)です。

未開社会でもその社会なりの考えがあって、科学技術の発展を受け入れてこなかった経緯を彼は発見しました。

文明に優劣はなく、その社会の構造があるだけなのだとレヴィ=ストロースは説きます。

発達した文明に住んでいても、人々はその科学技術を知らずにそこで生活をしているだけ、ということはよくあります。

未開社会やその民族によっての優劣はないのです。

構造主義では進歩してきた歴史という固定的な考え方を批判し、そこから新たに構造という枠組みを見つけ出しました

  • 歴史は進歩(固定的)
  • 人は構造により規定(固定的)

構造主義もポスト構造主義と同じく、固定を批判している点で一緒ではないかと疑問がでるかもしれません。

しかし、今のところポスト構造主義は思想自体が流動的です。

固定的

流動的

時代による知の枠組み、二項対立で揺れ動く、差異はいつも生じる、など思想が流動的な視点で捉えられています。

構造主義も進歩する歴史の見方を批判しますが、その批判も全体としてみれば固定化されていると捉えられます。

かといって、ポスト構造主義のように流動的でいいのかというと、また難点がでてきます。

流動的すぎて、答えが出てこなくて困った

答えがでてこなくて困る。

なので、その苦しみに耐えるネガティブ・ケイパビリティという能力もとりざたされるようになっています。

  • ネガティブは否定的とか、消極的と訳す
  • ケイパビリティは能力があるという形容詞

否定をつかむことができる能力がある、と訳されます。

ただネガティブをポジティブにするのではなく、ネガティブのまま掴んで自分に問いを持ち続けます。

答えがでない状態でいることも、流動的です。

では、他の固定化された思想を具体的に見ていくことで、より詳しくポスト構造主義を見ていきましょう。

ポスト構造主義の具体例

固定的なものの見方はいたるところで見つかります。

例えば、カントの道徳法則を見てみましょう。

イマヌエル・カント(1724~1804)は道徳法則として「汝、~すべし」と説きました。

これは言い切りの形です。

現代風に当てはめてみます。

  • あなたは人に迷惑をかけてはいけない
  • あなたは人を殺してはいけない
  • あなたは人に親切にしなければいけない

これらをポスト構造主義から批判してみましょう。

ポスト構造主義の思想は流動的です

  • 時代による道徳の移り変わりを考える
  • 道徳の反対として背徳を考えて脱構築を試みる
  • 道徳と背徳との差異を考える

などを試すことができます。

この結果として、カントの道徳法則が良いとか悪いといった一方的な意見はでてきません

ただこの道徳について考えることができる理論体系が出てきます。

善悪だけで捉えるのではなく、いろいろな見方をするのです。

21世紀の哲学として、中動態であったり、ネガティブ・ケイパビリティであったり、二項対立、「人間」、欲望の差異など、いろいろな視点がみられます。

ポスト構造主義は、「各思想には固定的な特徴が特にない」ということがかえってそれが特徴として現れてきます。

個性がないことが個性

ポスト構造主義とは|まとめ

ポスト構造主義とは、フランスを中心に構造主義のに登場した思想の流れです。

構造主義は1960年代から主流になってきた考え方なので、その後の思想になります。

固定的なものの見方を乗り越えるような類似性があります

固定的 ⇨ 流動的

物事を一方的に決めつけません。

なので、私たちに考えることを要求します。

考えているとき、あなたは思想の流れの中にいる
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