ポピュリズム

ポピュリズムとは何か|大衆とエリートの違い

  • 2022年10月24日
  • 2022年11月5日
  • 哲学

ポピュリズムの日本語訳は大衆主義

ポピュリズム大衆主義)⇒一般大衆の考え方や感情、要求を代弁しているという政治上の主張と運動
(広辞苑 参照)

ポピュラーと同じく大衆は、一般向き、広く普及しているという意味になります

しかし、ポピュリズムは悪い意味で使われることもあります。

一般がなぜ悪い意味を持つのでしょうか。

ポピュリズムを詳しく見ていきましょう。

「民」が語源なのに、どうして悪い意味を持つんだろう?

ポピュリズムとは

ポピュリズム大衆主義)とは、一般大衆の考え方や感情、要求を代弁する政治上の主張と運動です

例えば、トランプ政権(2017-2021)はポピュリズム、と言われました。

アメリカファーストというアメリカを一番に重視する思想をかかげたからです。

一般大衆の感情を取り入れて、政治の主張をしたのでポピュリズムと言われたのだと考えられます。

日本で考えてみます。

日本にカジノを!という場合。

カジノをしたいという国民の気持ちを代弁しているとすれば、ポピュリズムになります。
(経済事情を考えた結果かもしれませんが)

ポピュリズムは「エリート」と「大衆」を二つにわけて、「大衆」の権利を主張する主義です。

エリートという言葉を使うけど、「心のエリート」とイメージしてね

社会学者オルテガの大衆の考え方を見ていきましょう。

ポピュリズム(大衆主義)を社会学で読み解く

社会学で大衆は、属性や背景を異にする多数の人々から成る未組織の集合的存在です

つまり、組織に属していないけれど、同じような気持ちや考え方を持つ集まりです。

大衆⇒同じような気持ちや考え方を持つ組織に属さない集まり

スペインの哲学者ホセ・オルテガ・イ・ガセット(1883~1955)の大衆の考え方を見ていきます。

オルテガは人間をエリートと大衆の2つに分けて考えました。(社会学用語図鑑 参照)

エリートは少数者で、世の中をよくする努力を惜しまない人です

自分に多くの義務や責任を持ち、専門的な知識や技術を積みます。

それに対して大衆は、エリートの努力を当然のように扱う人です

大衆は社会や自分に責任を負いません。

知れ渡っている意見や価値観を一般的な考えとして押し付けます。

エリート⇨世の中をよくする努力を惜しまない人
大衆⇨エリートの努力を当然のように使い、責任を負わない人

このように言われると、自分がどちらに属しているのかが気になります。

オルテガは実際の職業や階級に関係なく、本人の心の持ちようでエリートか大衆かが決まると言いました

大衆の例を見ていきます。

「高級なレストランに来た!」
「ん?まずいから、お金返して!」
大衆はコックさんの努力を当然とみなして、自分の意見を押しつけます

「この政策はなってない!」
「どういう点がダメなの?」
「えっ、テレビでなってないって言ってた」
大衆は知れ渡っている意見を「一般的な考え」として、そこから反論します。

(説明ができないことを「説明深度の錯覚」といい、説明してと言われると自分が思っているほど世界を理解できていないというバイアス)

「この学者の説は人のパクリだ!」
「そうそう」
「理想論で、キレイごとだ!」
「うんうん」
「人の意見と一緒だと安心する」
「安心するね」

自分が他の人と一緒であることに安心感を覚えます

私は偉い科学者だから、エリート!
政治についての意見も言うよ。

この場合も大衆です。

科学の専門家であっても、専門外のよく知らない知識をもっともらしく言うことは大衆になります。

このような本人の心の持ちようが大衆です。

実際にエリートにこのような意見は直接には言わないかもしれません。

しかし、大衆は言わなくても心の中でそのような意見を持っています

なぜこのような心の持ちようになるのでしょうか。

大衆の心の持ちようを心理学で解釈

その一つを心理学の「認知的不協和」の理論から解釈してみましょう。

あの木になってるブドウは高いところにあるから取れない!
でもあのブドウはすっぱいから取れなくてよかったんだ。
このように自分の思い通りにならないことに対してできない理由を後から考えだすことです。
自分の考えと行動に矛盾が生じたときに不快感が生じます。
なので、それを和らげようと考え方を変えるのです。
  • ブドウおいしそう⇒取れない
  • ブドウはすっぱいから取らない

人は自分の考えと相容れない情報に合うと、まずは自分の考えに固執する傾向があります。

自分の不快感の認知を訂正する時、無意識のうちに大衆になっている可能性があるのです。

こころの持ちようなので、心理学を引用して考察してみました。

次にポピュリズムという言葉は政治でよく使われるので、政治での活用をみていきましょう。

ポピュリズムが悪く言われる理由

ポピュリズムは政治で使われます。

まずは、ポピュリズムが政治で悪く言われる理由をみていきましょう。

政治が偏見を持ってしまう

「21世紀の啓蒙㊦」では政治に関してこのように言われていました。

「誰もが政治でばかになる」
「わたしたちはすでに、政党への肩入れがスポーツファンの応援と同じようなものだと知っている。」

専門知識を持っていたとしても、自分の中で元から持っていた思想が、正しい政治を行えなくさせると言います。

自分に都合のいい政党に投票してしまう心理(好きだから投票)は否定できません。

著者スティーブン・ピンカーによれば、この政治的な偏見は、もっと一般的に知れ渡るべきだと語ります

この偏見を打ち破るためには、科学的に実証されていることや、統計や事実を元に語ればいいと彼は述べていました。

さらに、大衆心理がおよぼす悲劇を紹介します。

大衆心理が及ぼす影響

大衆の思想が及ぼす悪い影響も見ていきます

私たちの常識はどのように変化するのでしょうか。

たいていは、今までの非常識を受け入れる人が増えることでそれが常識になっていきます。
>>パラダイムシフトとは

ただし、その過程において迫害されてきた人々がいます。

「ブラックホールってすごいやつ」からストーリーを紹介します。

地球は回っていると唱えたコペルニクスは、その本の出版を死の直前に発表しました。

彼は司祭であったので、教会が公認する天動説を否定するのがはばかられたのです。

地動説は彼の死後、しばらくの間は閲覧禁止になっています。

その説に触れることすら禁止されていたのです。

そして、コペルニクスの死後から約70年。

地動説を唱えたのがガリレオ・ガリレイです。

ガリレオは太陽を見すぎて目が失明状態になっていました。

それほど研究にあけくれていたのです。

しかし、宗教裁判で異端者のレッテルを張られました。

破門が解かれたのは1992年。

350年間、ガリレオは破門されていました。

人は否定できないことを、ゆっくりと受け入れていきます

受け入れられたときにようやく新しい常識になり、一般的な考えになってくるのです。

その過程において、迫害されてきた人がいます

オルテガの用法を使えば、その迫害する人される人を、大衆(迫害する人)とエリート(迫害を受ける人)というように言い換えられるかもしれません。

迫害の歴史が大衆心理を物語る

大衆が一般的になる理由

ただ大衆が肯定的に捉えられる場合もあります。

考えるな!感じろ!

というような言葉に、多くの人は共感を示すことができます。

ポップカルチャー大衆文化)では、テレビ、ベストセラー小説、メジャーなスポーツなど、人々を楽しませます。

共感することで一体感を持ち、人生の楽しみの多くを生みだします。

時と場合による大衆の使い分けは必要です。

ポピュリズム(大衆主義)まとめ

ポピュリズム大衆主義)とは、一般大衆の考え方や感情、要求を代弁しているという政治上の主張と運動です

大衆を社会学から見てきました。

オルテガはエリート大衆を分けて、大衆が気をつけなければいけない点を上げます。

彼によれば、エリートと大衆を分けるのは本人の心の持ちようです

けう
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