「民主主義とは何か」を読みました。
この本は2021年の新書対象2位!
東大で読まれた本1位!
民主主義を知るための政治思想史の教科書として最適です。
まずは民主主義について、問題を3つ出しますので説いてみてください。
ブログの構成
- 民主主義とはなにか
- なぜ今、民主主義なのか。
民主主義とは何か
この本は民主主義についての謎を問いかけます。
民主主義の謎は3つ。
- 民主主義は多数決なのか、少数派の尊重なのか
- 民主主義とは選挙に尽きるのか
- 民主主義は制度か理念か
民主主義には、2500年以上もの歴史がありますが、そのほとんどの期間において、この言葉は否定的に語られてきたのです。ー肯定的に語られるようになったのは、例外的な時期を除けば、ここ二世紀ほどに過ぎません。
(この二世紀の間にも、相当に多くの批判がありません。)
「民主主義とは何か 宇野重規 p269」
民主主義は多数決なのか、少数派の尊重なのか
本書の本題をそのまま取り上げます。
問いのどちらか一方が正しいのでしょうか?
民主主義の多数決をめぐる問い
- 「民主主義とは多数決だ。より多くの人々が賛成したのだから、反対した人も従ってもらう必要がある」
- 「民主主義の下、すべての人間は平等だ。多数決によって抑圧されないように、少数派の意見を尊重しなければならない」
>>「民主主義とは何か」
民主主義とは選挙に尽きるのか
選挙をめぐる問いかけです。
選挙について
- 「民主主義国家とは、公正な選挙が行われている国を意味する。選挙を通じて国民の代表を選ぶのが民主主義だ」
- 「民主主義とは、自分たちの社会の課題を自分たち自身で解決していくことだ。選挙だけが民主主義ではない」
公的な議論による意思決定としての「政治」と「参加と責任のシステム」を現代日本において本格的に作動させる必要があると本では説いています。
民主主義は制度か理念か
心持ちへの問いかけです。
制度か理念か。
- 「民主主義とは国の制度のことだ。国民が主権者であり、その国民の意思を政治に適切に反映させる具体的な仕組みが民主主義だ」
- 「民主主義とは理念だ。平等な人々がともに生きていく社会をつくっていくための、終わることのない過程が民主主義だ」
参考文献「民主主義とは何か」のまとめ
本の構成は、各時代における民主主義とその問題、その批判などが教科書的に展開しています。
筆者の狙いは読者が民主主義を再解釈していくこと。
一人ひとりの読者がそれぞれに「民主主義を選び直す」ことが本書のゴールなのです。(p8)
現代社会はポピュリズムの台頭、独裁的指導者の増加、第四次産業革命、コロナ危機など、多くの危機に瀕しています。
筆者は問いによって問題を明確化しつつ、発展途上の民主主義において考えたい項目を3つあげます。
- 公開による透明性
- 参加を通じての当事者意識
- 判断に伴う責任
この3項目は、先ほどの問いとかかわってくることがわかります。
筆者は民主主義で最終的に問われるのは私たちの信念ではないか、と述べます。
個人は相互に自由かつ平等であり、それを可能にする政治・経済・社会の秩序を模索し続けるのが人間の存在理由です。
民主主義をどこまで信じることができるのか、それがいま、問われています。
(p265)
この本は民主主義を歴史の流れから学べる構成になっています。
では、次になぜ民主主義を取り扱うのかについて、話題の新書から取り上げてみましょう!
なぜ民主主義を今取り扱うのか
なぜ今になって民主主義を知る必要があるのかを、2つの本を例に説明していきます。
「バカと無知」から
「バカと無知」(橘玲 2022/10)から民主主義を見ていきます。
この本を一言でいえば、人間を脳科学や心理学の観点から現実的に見ている本です。
筆者は「文殊の知恵」ということわざは本当だろうか?と聞きます。
賢い者がバカの過大評価に引きずられることを「平均効果」という。
実験では、一方が他方の能力の40%を下回ると、話し合いの結果は優秀な個人の選択よりも悪くなった。
(「バカと無知」p58)
- 一定以上の能力を持ったもので話し合うこと。
- 話し合いをあきらめて、優秀な個人の判断に従うこと。
本書以外に、一般意思をスーパーコンピューターに任せるという思想もあります。
>>一般意思とは「ルソーの社会契約説を東浩紀さん解釈により解説」
だから、話し合いをせずにそれを出すにはコンピューターに頼るしかない、という思想
民主主義というものは、時代背景によってその中身が変わってきています。
その中身に自覚的になるには、その時に取り上げられた思想を見る必要があります。
橘玲さんは「バカと無知」で、日本は「選挙に行くのが大事」という意義で止まっていると批判します。
行くことだけが大事という価値観への批判です。
その結果、中身を見れていないので大衆政治を引き起こすことがあります。
>>大衆とは(オルテガの見解から)
人新世の「資本論」
「人新世の『資本論』」は2020年に刊行され、30万部以上を記録した話題になっている本です。
人新世は人が地球に影響を与えだしたことを言います。
- 完新世:地球>人類(人は大きな地球に対して何をしても変わらない)
- 人新世:地球<人類(人が地球に影響を与えすぎて地球が病んできた。
詳しくはこちらをどうぞ
>>「人新世」とは
環境が今までの完新世から人新世に変わったということは、私たちも思考を変える必要がでてきます。
理由は、今までの生活では地球がもたないからです。
しかし、それには問題があります。
例えば、
- 環境が変わるときにおこるパラダイムシフト
>>パラダイムシフト - 認識がかわるときにおこる認識論的断絶
>>認識論的断絶
現実がパラダイムシフト(思考の枠組みの変換)を受け入れるには、とても長い年月がかかります。
例えば、世間が地動説を常識として受け入れるには半世紀以上かかっているのです。
その間に経済格差はかなりの勢いで促進しているという現実。
しかし、筆者は「3.5%」という数字に期待を寄せます。
「3.5%」の人々が非暴力的な方法で、本気で立ち上がると、社会が大きく変わるというのである。ー
フィリピンのマルコス独裁を打倒した「ピープルパワー革命」(1986年)、大統領のエドアルド・シュワルナゼを辞任に追い込んだグルジアの「バラ革命」(2003年)は、「3.5%」の非暴力的な市民不服従がもたらした社会変革の、ほんの一例だ。(人新世の「資本論」p362)
筆者は民主主義の力を信じてこの本を書いています。
民主主義とは|まとめ
民主主義は、人民が国または地域の権力を所有します。
自分たちで自分たちを支配する、ともいえるのです。
そして、民主主義の内容は時代によって変わってきています。
歴史的に「民主主義」の形態が好ましいものであったとして、その中身を考えていく動きは続いていくのです。