「カエルの楽園」(百田尚樹著 2016)は50万部突破のベストセラー寓話。
続編に「カエルの楽園2020」、解説書に「百田尚樹×石平『カエルの楽園』が地獄と化す日」がでています。
日本人は平和慣れしていたり、対話が少ないと言われています。
平和について考えてみましょう。
ブログでは物語について簡単に触れ、平和問題について触れていきます。
「カエルの楽園」の物語と平和問題
「カエルの楽園」はカエルが主人公の寓話です。
アマガエルの集団が理想郷を求めて旅立ちます。
今までの土地はダルマガエルに支配されてしまったからです。
厳しい旅の途中で、アマガエル集団は2匹のみとなってしまいました。
ある日、2匹はナパージュ(napaj)にたどり着きます。
そこは平和の楽園!
「楽園なんてないのではないか」
そんな諦めがあった中、とうとう2匹は楽園を見つけたのです。
その楽園は大きな鷲(ワシ)に守られているようでした。
楽園のカエルたちは、三戒を大事にしています。
- カエルを信じろ
- カエルと争うな
- 争うための力を持つな
三戒が守られているので、大きな争いはこの楽園では起こりません。
ところがある日、1匹のウシガエルが楽園の領土内に入ってきました。
一般的にウシガエルはカエルを食べます。
カエルたちは怯えますが、ウシガエルを刺激しないようにしました。
三戒を守ります。
三戒が通じたのか、ウシガエルは帰っていきました。
ところが次の日、2匹のウシガエルが楽園の領土内に入ってきました。
ここでもカエルたちは三戒を守って見送ります。
さらに次の日は3匹、その次の日には4匹と、日に日に増えていきます。
さて、カエルたちはどのような選択をとるべきでしょうか?
2つの選択肢を立てました。
- ずっと見送る
- 撃退する
その選択をとった結果や問題点を見ていきましょう。
「カエルの楽園」問題から選択「ずっと見送る」
カエルたちは三戒を守ることにしました。
カエルを食べるウシガエルであっても、この掟があれば攻撃してこないと思ったのです。
ウシガエルを信じ、ウシガエルとの争いを避けます。
さらに、ウシガエルの脅威となる武力も放棄することにしました。
同盟を組んでいた鷲(ワシ)と、同盟を解除したのです。
カエルたちは徹底的に非暴力、平和主義を貫きます。
①楽園がなくなる
ウシガエルはどんどん増えていきました。
50匹を超えた頃には、ウシガエルは楽園の中をわがもの顔で自由に歩き回るようになりました。
事件も起こります。
ウシガエルがカエルを食べたのです。
本能的にウシガエルはカエルを食べる習性をもっていました。
そして、一つの国家だった楽園がその姿を消していることに、カエルたちは気が付きました。
「ウシガエルに支配されても、平和ならいいじゃない」
そう述べる三戒支持者は、ウシガエルに食べられてしまいました。
本の筋書きだと、このような末路をたどります。
ウシガエルに支配されて楽園がなくなるというバットエンド。
ただし、ここにもしウシガエルが平和主義だったら、という思考を取り入れてみましょう。
②ウシガエルが平和主義だったら
多くのウシガエルを見送ってたカエルたちが信じていたことは、ウシガエルも同じく三戒を守ってくれると信じていたことです。
カエルはウシガエルも三戒を守ってくれるように促します。
すると、ウシガエルも争いが嫌いだったようです。
なので、ちょっとずつ国を侵食しようとしていたのでした。
争いが嫌いなウシガエルですが、争わずに楽園を手にいれようとします。
ウシガエルの信念は「戦わずして勝つ」ことのようでした。
気が付くと、楽園は消えてウシガエルの国になっていました。
愛国心の低かったカエルたちですが、楽園がなくなったことで初めて楽園について考えます。
「私たちはどんな楽園にいたのだろうか」と。
平和は平和でも、違った形の平和になりました。
楽園のカエルたちは話し合いが好きです。
では、ウシガエルと話し合った場合を考えてみましょう。
③ウシガエルと話し合う
「どうして楽園に来ているの?」
カエルはウシガエルと話し合いをしてみることにしました。
すると、ウシガエルの国がひどいことになっているとわかったのです。
- 環境汚染
- 食料不足
- 男女比率の差
ウシガエルの土地は沼地です。
そこでは大気汚染、水汚染で生存空間が足りなくなってきていたのでした。
④ウシガエルがカエルを食料だと思っていた場合
なぜ支配が起こってしまうのでしょうか。
カエルはカエルでも種族が違います。
その場合に、ウシガエルはカエルを食料や奴隷と見なしていることもあります。
ウシガエルは普通にカエルを食べます。
「カエルの楽園」問題から選択「撃退する」
「カエルの楽園」は二部作で、続編は「カエルの楽園2020」になります。
続編ではウシガエルを撃退するという一つのハッピーエンドがありました。
①ウシガエルを撃退するハッピーエンド
ここでのハッピーエンドは撃退するといっても、武力行使には出ません。
三戒を変えたのです。
- カエルを信じろ⇒ウシガエルを疑う
- カエルと争うな⇒ウシガエルとできるだけ争わない
- 争うための力を持つな⇒防衛力は高める
まずは鷲(ワシ)との同盟を強めました。
ウシガエルが日に日に増えてくるのを鷲に止めてもらったのです。
さらに、ウシガエル国とは距離を置くことにしました。
楽園はウシガエル国に頼った貿易も多かったのですが、それが不平等な関係を招く場合にはやり取りをやめたのです。
ただし、個人的にウシガエルと仲良くすることは許可します。
楽園の脅威はさったのでハッピーエンドです。
②教育を変える
楽園では「三戒は必ず守る」という掟がありました。
平和信仰といっても良いくらいに強固に守られていたのです。
なぜ楽園で強固に守られていたのかと言えば、ある歌が伝えられてきたことが一つ。
- 我々は、生まれながらに罪深きカエル
- すべての罪は、我らにあり
- さあ、今こそみんなで謝ろう
カエルの楽園も戦争をしてきたという過去がありました。
それを反省して、世界一の平和国家を作り上げたのです。
しかし、楽園は平和に関することばかり学んできたので、それに対してなんとかするという視点が欠けがちになっていました。
>>戦争プロパガンダとは
三戒信仰を守る義務はウシガエルにはありません。
三戒はそれ自体が平和を守ってくれるものではないのです。
平和に加えて、平和以外の視点を教育によって獲得していく方法もあります。
③武力の強化
楽園のカエルは武力を強化しようと思いました。
今まで軍隊と言うものが楽園にはなかったからです。
ところが、楽園には強力な指導者がいませんでした。
意見を決定させるには、このどれかが必要です。
(「(日本人)橘玲 2012 参照」)
- 全員一致の妥協
- ルール原理主義
- 独裁
楽園は三戒というルールを徹底してきました。
それが変わるのならば、新しいこのどれかが必要になってきます。
ただ武力を強化しろ、とは言えないのです。
④ウシガエルを個人的に撃退する
ウシガエルが現れたときに、力自慢のカエルがウシガエルを撃退したことがありました。
しかし、三戒が守られている中で行われた「撃退」だったので、力自慢カエルは刑罰を受けます。
「個人で善かれ」と思ってしたことは、法律的にみれば「悪いこと」だったのです。
カエルはウシガエルに謝ります。
急に攻撃をしてしまってごめんなさい。
力自慢カエルは処分しますから許してください、と。
国家間の問題は、みんなの同意を必要とします。
「カエルの楽園」から対話をしてみようーまとめ
「カエルの楽園」は平和について考えさせてくれます。
- 三戒を守る利点とその不利益。
- 撃退をする利点とその不利益。
それらを考えていくことが、ナパージュ(napaj⇒逆にするとjapan)を考えることになっていきます。