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ギンギツネの家畜化から家畜化症候群を捉えていく。

おはようございます。けうです。

 

家畜化とは何か。

これについて今日は話していきたいと思います。

参照にしたのは「善と悪のパラドックス」リチャード・ランガム著です。

自己家畜化についてはこちら。
>>自己家畜化の歴史

筆者は「家畜化」ということばを、「生涯のあいだに飼い慣らされる」ではなく、「遺伝的適応の結果として従順になる」という意味で使用しています。

私はこの本の紹介を受けたときに、おもしろそうだなと思った内容は家畜化するとある一定の現象がでてくる、ということです。

それをキツネを例に紹介していきます。

家畜化の特徴-ギンキツネ

遺伝学者ベリャ―エフは1958年頃から数百匹のキツネを飼育することにしました。

ギンギツネの毛皮が好まれていたので飼育がおこなわれていたところに、実験もすることにしたのです。

ベリャ―エフはこの繁殖実験で仮説を立てました。

「従順さ(遺伝性の特徴)を増大させるためだけの選択が、繁殖周期の短縮を含む家畜化症候群を引き起こす」というものです。

反応的攻撃性(カッとなってすぐに相手を攻撃してしまう)をみせる野生種を家畜化していくにあたり、その反応的攻撃性が低くなることは他にどのような特徴を持つのかを調べたのです。

家畜化をしていく過程はこうです。

ほとんどのギンキツネは初め野生的で攻撃性を示したのですが、その中でおとなしい個体をみつけたり、人を怖れない個体を集めたりして繁殖させました。

その個体から生まれた子ギツネをつぎは調べて、さらにそのような特徴をもつ個体を交配の集団に選んでいきます。

初めは約20%のメスと約5%のオスが特におとなしいと判断されました。

その後、わずか3世代のうちに攻撃性やおびえた反応を示さない個体が出現。

そして、10世代後にはこうした新鋭の子ギツネが全体の18%出現。

それから、20世代で35%。

30世代以降で70%以上の出現率をほこるようになりました。

数年もすると、このギンギツネをペットとして輸入したいという申し入れがでたほどです。

選択的交配が始まって約10年後、家畜化の動物における全体的な特徴である白いぶち模様がキツネに観察されるようになりました。

さらに、普通の野生種は約一年に一度、子どもを産んでいたのですが、家畜化の特徴を示すメスは一年で3回出産するようになったといいます。

ベリャ―エフの仮説通り、家畜化する(従順さ)につれて星型異変(ぶち)が生じ、繁殖周期の変化が起こりました。

 

家畜化症候群の特徴として、従順になることとは反応的攻撃性(カッとなって攻撃する)を低下させていくこと。

それに伴って、体の変化として星型異変がでてきたり、繁殖回数が多くなったり、他には耳が垂れ下がったり、頭蓋骨のカタチが変化(小さくなる)したりといった特徴がでてきたのです。

なぜこのような特徴がでてくるのか。

家畜化の特徴

2014年に筆者は研究によって、神経堤細胞が副腎に影響を与え、個体の大きさとホルモン産出率を減少させることが、家畜化された動物の感情的反応を抑える主な原因なのではないかとつきとめました。

体の中でホルモンや細胞の変化が起こっているので、結果として家畜化されていると筆者は考えたのです。

「学者クルスカは、家畜化で脳がもっとも縮小するのは感覚処理に関係する部分、とくに聴覚、視覚、辺緑系であることを発見した。それらは感情、反応および攻撃性に関与している。」

家畜化の特徴は体の実質的な変化があり、脳も縮小しているのですが、その縮小している部分は感情系だと言います。

ただし、そのほかの部分は変わらないので頭の良さは変わらないと言われていました。

ヒトの場合でも、脳が小さくなっても頭が悪くなるということはなくて、感情的にならなくなるということと脳の大きさが関係しているということです。

そして、このキツネの実験では人が家畜化を行いましたが、自然でも自己家畜化が起きていることが分かってきました。

家畜化-チンパンジーとボノボの例

その例がチンパンジーとボノボです。

私は違いをこの本によって違ったのですが、ボノボはちゃんとした種として存在しているようです。

よく動物園に行くときにはボノボを見に行くとは言わないですよね。

でも、種としてチンパンジーとは違うということ。

ボノボが新種であることを知られたのは1881年。

それから、普通のチンパンジーとは見分けがつきにくくて50年近くその違いを依然として認識されてこなかったようです。

それが、1928年にハロルド・クーリッジがボノボの頭蓋骨がチンパンジーとは違うことを発見。

チンパンジーの子どものような頭蓋骨だけど、この頭蓋骨は大人の完成されているものだと発見したのです。

そして、彼は1933年にボノボをまた新種として「パン・パニスクス」という学名をつけたそうです。

これほどまでに確認されてこなかったボノボなので、私たちが日常的に接する時にはあえてボノボと言わないのかもしれません。

 

チンパンジーとボノボの違いは自己家畜化の特徴からも説明されています。

チンパンジーが野生なのに対してボノボは家畜化されていて、社会性を帯びています。

2012年に野生で家畜化症候群の特徴をもっているのがボノボだとわかりました。

ボノボはチンパンジーより攻撃性が低下している。

ボノボは頭がより小さく、頭部の体毛が中央で左右にわかれていて、顔全体が黒く、唇はピンク色というような外見的特徴を具えています。

チンパンジーは優位性を見せつけるために、オスがメスに対して暴力を振るうようになったり、オスが子どもを殺したりするのですが、ボノボにはあまり見られないそうです。

ボノボはこの生殖の争いである交尾を他の仲間と仲良くなる手段として使ったり、それを遊びに取り入れていたりするそうです。

家畜化のまとめ

動物の家畜化症候群を見ていきました。

外から見られる特徴は、遺伝子や細胞レベルで変化があるということ。

これが人間に適応されたとするとき、遺伝子解析からして自分の性格や特徴がわかるというのはちょっと怖いような気もしますね。

筆者は人間の祖先のホモ・サピエンスを家畜化症候群にかかった種として見ています。

ホモ・サピエンスが社会性を帯び、その中で平和にくらせていることは今の世の中においてそちらの方が生存確率的に選択されてきたのかもしれません。

顔が小さい人が好ましかったり、おとなしい人が好ましかったり、無意識に遺伝子レベルで好みがあるのかもしれないと思いました。

では、お聞きいただいてありがとうございました。

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