抵抗権 経験論

ジョン・ロックの思想を紹介!抵抗権と経験論

社会契約説は日本の教育では、ホッブズ⇨ロック⇨ルソーの流れが有名です。
>>ホッブズ「リヴァイアサン」による社会契約説

なので、ホッブズの次にロックを見ていきましょう。

ジョン・ロック(1632-1704)はイギリス経験論の代表的な哲学者であり政治家です。

ロックが説く社会契約説で有名なのが抵抗権です。

抵抗権と、抵抗権を唱えたロックの基本思想を見ていきましょう。

ジョン・ロックの抵抗権

ジョン・ロックはホッブズ(1588-1679)の社会契約説の次によく取り上げられます。

まず、ホッブズは当時、王権神授説を否定しました。

国王の権力と神様がくっついていると言う説を否定して、人間の平等を説いたのです。

しかし、まだ国家に絶対的な権力を持たせることで、絶対王政を擁護するかたちをとっていました。

その次に発展させたのが、ロックの抵抗権です。

ホッブズ「人間は平等!でも、人間は狼だから、恐怖支配しなきゃ!」
ロック「人間は平等!いやいや、人間は神によって作られたんだよ。」

ロックが考えた理想的な国家では、主権が国民にあるべきだと考えます。

なので、絶対服従なのではなく国民に抵抗権を認めたのです。

絶対服従を生まないために、国家の権力を3つに分けることを提案します。

国民はその権力に信託(信頼し、管理運用してもらう)するとしたのです。

信頼するだけなので、もし人民の権利が踏みにじられる場合、抵抗権が発動します。

そうした場合に、革命が肯定されるのです。

ホッブズもロックも人間は平等だと説いていますが、その人間に対する捉え方が違います。

ロックは人間の状態を理性に基づいた自由かつ平和な状態だと考えたのです。

「この法たる理性は、それに聞こうとしさえするならば、すべての人類に、一切は平等かつ独立であるから、何人も他人 の生命、健康、自由または財産を傷つけるべきではない、ということを教えるのである。人間はすべて、唯一人の全知全能なる創造主の作品であり、すべて、唯一人の主なる神の僕であって、その命により、またその事業のため、この世に送 られたものである。(ロックの政治論 菊池慧)」

つまり、ロックは国民が神に権利をもらっていると考えます。

以前は国王の権利を神が保証していましたが、次は国民の権利を神が保証すると言う考え方です。

簡略化します。

「王権神授説」神⇨国王に権限を与える
「ロック」神⇨国民に権利を与える
この考え方からすれば、国民一人一人が平等であり、いわば性善説のように人は従来「善」なのだと考えます。
ロックはイギリス経験論の祖だと言われています。
では、人間はどうやって認識を得ていくと彼は考えたのでしょうか。
ロックの有名な言葉は「タブラ・ラサ」です。
ロック「人間の心は生まれたときは白紙だ!(タブラ・ラサ)」

ジョン・ロック「タブラ・ラサ」の意味

ジョン・ロックはお医者さんです。

彼はたくさんの赤ちゃんを見てきました。

そんな彼は赤ちゃんが生まれつき観念をもっているわけがない、と考えます。

観念とは、自分が意識している事や物です。

こども
赤ちゃんに話しかけても答えてくれなかった。

「タブラ・ラサ」とは、ラテン語で「何も書かれていない書板」の意味です。

その言葉をロックは「白紙の心」として使いました
そして、経験したことがこの紙に書き込まれて、知識や観念になると主張しました。(哲学用語図鑑)

このようにロックが主張したのには理由があります。

当時は人は生まれながらに観念があると考えられてきたからです。(有名なのはデカルト)

例えば、数です。

人はなんなく数を操ります。

しかし、ロックは考えます。

ロック「生得観念があるなら、子供だって数がわかっているはずだ。
生まれたばかりの赤ちゃんは数を知らないじゃないか。」
こども
はい!僕は数を100まで数えられるよ。
先生に教えてもらったからね。
このように経験によって白紙の心に知識が書き込まれていくとロックは考えたのです。
知識や観念はすべて五感(聴覚、視覚、触覚、味覚、嗅覚)を通じて得た経験によるものだという考え方を、イギリス経験論といいます
経験を通して知識になるとはどのようなことかを見ていきます。

ジョン・ロックの経験論「単純観念と複合観念」

ロックの「タブラ・ラサ」(人に生まれつきの知識はなく、すべて経験によるもの)。

ここで気になるのは、ロックが経験をどう考えたかです。

「ロックは意識と身体は一体のものであり、まずは身体が物事を知覚することで、その情報が意識に伝わり、そこで内省と呼ばれる作用が生じるとした」(哲学用語事典
つまり、ロックは経験を「感覚」と「内省」という段階に分けました

けう
手でさわったり、食べたりしてからそれを知る、という二段階にわけたんだね!
すべては経験によるとはどういうことなのかを、詳しくみていきます。
まずは単純観念です。

ジョンロックの単純観念

例えば、子どもにチョコは苦いモノなんだよ、と教えておくとします。
これは聴覚情報です。
見た目は茶色(視覚情報)。
触っていたらべとべとした(触覚情報)。
甘い匂いがします(嗅覚情報)。
子どもに目をつぶってもらって食べてもらうと、何か甘いものを口にいれられた、と子どもは感じました(味覚情報)。
このそれぞれの印象は単純観念です。
では、子どもに5官でチョコを味わってもらいます。

ジョン・ロックの複合観念

ジョン・ロックの複合観念は単純観念の経験が組み合わさってできた知識です。

子どもにチョコをあげます。

こども
もぐもぐもぐ、美味しい! これがチョコか!
ん?苦くない。ウソついたな!
甘い、茶色、いい匂い、などの五感を頭のなかで組み合わせて(内省する)、これがチョコだとわかります。
五感の一つ一つ(単純観念)を内省して複合観念をつくり上げます。
図で生得観念とロックの経験論の違いを図にしてみます。

このように考えていくと、ロックは教育を重要視したのだと解釈できます。

では、ロックの社会契約説に戻ります。

ロックの抵抗権と経験論

ロックの自然状態の人間の捉えかたは性善説のようなものです。

人間は神の作品なので、人間には一人一人権利があります。
それでも、謎に思うのはなぜ抵抗権を使わなければいけない状態になるのか、ということです。
元々が善ならば、そのような状態にならないのではないか、と。
そんな問いに、「タブラ・ラサ」(人間の心は白紙)で答えることができます。
神の考え方がこの世界に適応しているわけではありません。
人は教育によって知識をだんだん身につけていきます
ロックは「健全な身体に宿る健全な精神」という言葉も使います。
身体が健康な状態のときに、健全な精神を身につけられると言うのです。
つまり、五官で得たことを内省することによってやっと、複合観念が生じて知識になります。
ただ聞いただけ、ただ触っただけ、という単純観念だけでは知識にならないと考えます。
なので、人が本来の神からの自然状態を発揮するにはまず教育が必要だということです。
これも性善説と似ています。
ただ詰め込み教育が良いというわけではなく、五官を使った総合的な学習が必要だと解釈できます。

ジョン・ロックの思想-まとめ

ジョン・ロック(1632-1704)はイギリス経験論の代表的な哲学者であり政治家です。

ロックが説く社会契約説で有名なのが抵抗権です。

国民一人一人が権利を持つことで、イギリスの名誉革命やフランス革命につながりました。

ただし、ロックは人間の心を「白紙」だと捉えています。

なので、人間の教育の必要性も説いているのです。

この思想は啓蒙(無知の人を啓発して正しい知識に導くこと)思想にも繋がりました。

けう
人は平等という一つの考えでも、人の捉え方はたくさんあるんだね!
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