構造主義とは、人間の言動はその人間が属する社会や文化の構造によって決められていると考える思想です。(哲学用語図鑑 参照)
文化人類学者のレヴィ=ストロース(1908~2009)が構造主義の発案者だと言われています。
「人間に主体性や本質がある」という考え方を疑います。
科学を重視する現代に主流な考え方でもあります。
私たちの思考は気がつかないうちに構造主義になっているのです。
では、詳しく見ていきましょう。
構造主義の捉え方
構造主義は、私たちの行動や考え方は社会の枠組みやルールで決められているという考え方です。
自由な人間の本質を否定します。
人間は構造に当てはめられている、と考えます。
例えば、心理テストです。
血液型判断とか、心理テストの性格判断を私たちは楽しみます。
A型なら真面目、B型ならマイペース、O型なら大雑把、AB型は天才肌といった具合です。
血液型だとだいたい4パターンくらい、心理テストの回答でも何タイプかの答えがでてきます。
なぜ当てはめられるとおもいますか?
私たちはそこに構造を見ているからです。
社会的場面だからおじぎをするとか、みんなが挨拶をするから挨拶をするなど。
個人単体ではなく、全体の差異を個人だと見なします。
人を構造でみるのが構造主義です。
社会や文化という全体の構造があって、その中の差異が個人になります。
私は昔、びっくりしたことがあります。
社会学の授業で、「社会学で言えば私はいないんだよ」と教授が述べたことです。
これは拡大解釈すると、心理学、科学でも「私」はいないことになります。
図でいう左側の個人の「私」がいないということを指します。
人を一般化して理論化するからです。
人間は無意識的にこんな行動をするというのが科学的に客観視できるようになっているからです。
この考え方がなぜ注目を浴びるかと言うと、プラトンのイデア論に代表される「本質がある」という考え方を否定するからです。
そして、この構造主義はある実験から根拠を持つようになります。
赤ちゃんはまず最初に「私でないもの」を認識することが分かったからです。
他者である母親や鏡から、生後1歳を過ぎた頃に私の身体のイメージを獲得することがわかってきました。
「私」は「私でないもの」から作られるということです。
人間が元々、世界にある構造(私でないもの)から「私」を作っていくことがわかってきたのです。
「完全に自由な人間なんていない。構造が元にある。」 このようなことが証明されています。
ただこれは悲観的な面だけではありません。
個人個人に焦点を当てると、「私はなんて孤独なんだ」と思うことがありますよね?
世界に一人ぼっちな感覚。
でも、孤独ではなくなります。
視野を全体にもっていく。
すると、これは「すでにある構造」で理解ができるようになります。
「私は今、孤独を感じているけれど、このような孤独を感じている人が他にもいる。」
そうやって他の人も一緒だと思うと、寂しくなくなります。
悩みを構造で理解することができます。
構造主義の起源
レヴィ=ストロースはソシュール(1857~1913)の言語学に影響を受けています。
ソシュールは「名」とは部分が集まって全体が出来るのではなく、全体と言う構造の中の差異が「名」だと言っています。
構造主義の図式の個人を名に変更すると、彼の言語学になります。
レヴィ=ストロースはソシュールの考え方を人間社会に適応しました。
この捉え方も構造主義的です。
新しい発見が彼によってされたのではなくて、他の方面から発想の転換がなされたという考え方です。
では、どのような場面でその発想がされたのか。
それは、レヴィ=ストロースが未開の土地に行った時のことです。
彼は、未開の土地ではその土地にあった文化やルールがあるというのを発見しました。
つまり、未開の地といっても先進国と同じ文明があって、その文明に則してルールがある。
そのルールはどちらがいいとか、どちらかに統一するものではないという考え方です。
今日言われている多様性の捉え方になります。
例えば、環境問題的な観点から見るのか、便利という観点からみるのかの違いです。
誰かが何かを主張したとして、相手から見れば正解で、こちらからだと不正解に見えるという思想です。
構造主義の名言
名言から構造主義を見ていきましょう。
レヴィ=ストロースの名言。
「世界は人間なしに始まったし、人間なしに終わるだろう。」(悲しき熱帯)
この「人間」は実存主義で考えられる「人間」を指しています。
私だけの考え方、私だけの個性、自分の存在を自由と主体性を持ってみる思想。
このような人間を否定しています。
構造主義は実存主義の否定から出てきた面があります。
この名言と同じく捉えられるフーコー(1926~1984)の名言。
「人間は波打ちぎわの砂の上に描いた顔のように、消滅するだろう。」
この「人間」も実存主義の意味する人間です。
「私とはなに?」 というのはずっと続く哲学的な問いです。
ないかもしれない「人間」は、あるものとしての「人間」とも扱われてきました。
この構造主義的な観点から、新たに「人間」を摸索していくことが求められています。
構造主義とはーまとめ
構造主義は、私たちの行動や考え方は社会の枠組みやルールで決められているという考え方です。
自由で主体性な「人間」を否定。
この「人間」はレヴィ=ストロースやフーコーで言えば、実存主義を指します。
さらにいえば、プラトン哲学からのずっと変化しない本質的な考え方があるという見方を否定します。
構造主義が広がり、科学的な見方がされやすいのが現代だと言えます。
全体の差異としての個人が分析結果によって現れてきます。