このブログの目的は、倫理を身近なものにすることです。
今回は
高校倫理第2章
「人間としての自覚」
第4節「仏教」
②インド思想から仏教誕生の理由
を扱っていきます。
今回から仏教に移ります。
ブログ構成
- カースト制度とは
- ウパニシャッド哲学
- 仏教とジャイナ教
参考文献 日本仏教は謎だらけ(三田誠広)、哲学と宗教全史(出口治明)、世界の民族と紛争(祝田秀全)
仏教がでてきた背景を知るために、まずはインド思想から!
インド思想の身分制度「カースト制度」とは
紀元前15世紀ごろ、中央アジアからインドに侵入したアーリア人は先住民族を征服しました。
アーリア人はガンジス川中流域に住み、農耕社会をきずいたのです。
農耕をするには社会システムが必要になってきます。
彼らは身分制度としてカースト制度をつくりあげました。
- バラモン(司祭)
- クシャトリヤ(王侯・戦士)
- ヴァイシャ(庶民)
- シュードラ(隷属民)
この順番で力を持ちます。
カースト制は神によって定められたものなので、基本的に変更することができません。
カースト制に属さない人は④シュードラ(奴隷民)のさらに下の⑤パリヤ(不可触民)と呼ばれ、特に差別されました。
神による判定で生まれ変わり(輪廻転生)が信じられてたから、みんなシュードラやパリヤにはなりたくなかった
カースト制度は神によってなりたち、その神々と意思を交換する権利はバラモンのみが持っていました。
バラモンたちの知識は「リグ‐ヴェーダ」などのヴェーダ聖典に残され、バラモン教の基礎となっています。
ヴェーダは口伝のみで伝承されて、後になって文字にされたものもごく一部だと言われています。
インド思想|ウパニシャッド哲学
ヴェーダの関連書物の一つはサンスクリットで書かれたウパニシャッドです。
一般にウパニシャッドは奥義書と訳されたりします。
バラモンたちによって哲学的思索(ウパニシャッド哲学)がおこなわれた
この中に、輪廻の考え方が登場します。
輪廻⇒移りゆくこと
輪廻転生は死後に別の生物としてこの世にうまれかわることです。
死後にうまれかわる世界は、この世でのおこない(業、カルマ)の善悪によって決まります。
怖いなら解脱しちゃえばいいんだよ!
(解脱⇒輪廻そのものからの解放)
ウパニシャッド哲学の内容
ウパニシャッド哲学では解脱の達成のため、宇宙と自己とを一体とする道が説かれました。
例えば、塩は水にとけてしまえば目にみえなくなるけれど、塩は存在しています。
これと同じように、わたしたちの身体のなかには、目に見えない真実の自己(アートマン)が宿っている。
そしてアートマンは、宇宙のはじまりから存在し、万物に宿る最高の存在者(ブラフマン)に等しい。
ウパニシャッド哲学者は自己と宇宙との合一の境地(梵我一如、ぼんがいちにょ)によって、解脱することを目指しました。
アートマンとブラフマンの本質的一致⇒梵我一如
そのための実践として、出家、断食などの苦行や精神集中などがすすめられたのです。
世界と一緒になっちゃえば、輪廻転生しなくなるってことか
当時の民衆に受け入れられなかったバラモン教やその哲学は、4世紀頃に形を変えてヒンドゥー教になりました。
ウェーダやウパニシャッドを基礎としながら、シヴァ神やヴィシュヌ神などの民間信仰と融合して誕生した宗教がヒンドゥー教です。
下の身分の人たちにも受け入れやすい神々を取り入れて(多神教)、バラモン教からヒンドゥー教になったよ!
バラモン教が当時の人々に受け入れられなかった理由の一つは牛です。
インド思想から仏教とジャイナ教が誕生
バラモンは特権階級なので、下の層の人々を支配できます。
そのバラモンたちは司祭なので、よく儀式や祭典を好みました。
儀式や祭典には大量の生贄が必要。
バラモンたちは下の人々から牛などの生贄をうばっていきました。
ガンジス川周辺では、農耕が盛ん。
農耕には牛が必需品でした。
それなのに、牛がいなくなってしまうのは農民にはとても痛手。
そこで登場したのが、ブッダ(仏教)とヴァルダマーナ(ジャイナ教)です。
- ブッダ「無益な殺生はダメ」
- マハーヴィーラ「不殺生」
下の層の人々が仏教やジャイナ教に入れば、バラモンからの牛の要求も断ることができます。
こうして、バラモン教は衰退していき、かわりに仏教やジャイナ教がでてきました。
禁欲的なジャイナ教教団は特に庶民(ヴァイシャ)に支持されたよ
ジャイナ教徒が水の中にある微生物をみせられたとき、水を飲まずに死を選んだという説がある…
なので、バラモン教は形をかえてヒンドゥー教になって盛り返しました。
民間信仰されていたシヴァ神の取り入れ。
シヴァ神の乗る神聖な動物は牛なので、牛を神聖視して儀式で殺さないようにしたのです。
ヒンドゥー教では牛はシヴァ神の乗り物だから、殺しちゃだめってなったんだね!
現在でもインド国民の8割はヒンドゥー教です。
1950年にカースト制による差別は禁止されましたが、まだ職業選択や結婚には自由が利きません。
数千年来の社会システムは根強く、カースト制によってどんな有能な人物も上になれない構造になっています。
インド思想から仏教がでてきた理由
他にも、バラモン教から仏教がでてきた歴史背景をみていきます。
インドは小国家(部族国家)がたくさんあり、そのうち大きく16国に分かれました。
そのうちの一つがマガダ国(紀元前682-紀元前185年)。
マガダ国の王様は、王様なのにも関わらずカースト制では2番目の地位です。
王様なのに、王様より偉い人がたくさんいることになる!
そこで、バラモン教ではなく、そのころ新興宗教としてたちあがっていたブッダやヴァルダマーナを支援することにしました。
マガダ地方はアーリア部族にとって外地で、バラモン教の権威や習慣が少なかったのです。
バラモン教ではマガダは軽蔑されて呼ばれていたみたい
まとめます。
- バラモン(司祭)⇒バラモン教、ウパニシャッド哲学
- クシャトリア(王侯・戦士)⇒仏教
- ヴァイシャ(商人・庶民)⇒ジャイナ教
- インド国民の8割⇒ヒンドゥー教(バラモン教と民間信仰が融合)
今回はインド思想から仏教がでてきた理由をやりました。
次回はブッタの教えについて取り扱います。