ブリコラージュという言葉は、構造主義を唱えたレヴィ=ストロースが著書「野生の思考」の中で語りました。
>>構造主義をわかりやすく
それでは、ブリコラージュをみていきましょう。
ブリコラージュとは
ブリコラージュとは、その場の型にとらわれずに自由な形で作り上げることをいいます。
フランスの文化人類学者レヴィ=ストロース(1908-2009)が唱えました。
ブリコラージュは「器用仕事」などと訳されます。
元はフランス語のbricoler「繕う」「ごまかす」に由来します。
では、具体例をみていきます。
ブリコラージュを使った具体例
お腹が空いたという要望に応え、早く作りたいという時間的制限。
冷蔵庫の中身しか利用できないという資源の制限。
この制限された中で、その人にあったものを作りあげる。
このことをブリコラージュといいます。
もし、ここで冷蔵庫の中にトリュフやら果物やら豊富に入っていたとしても、その場で作り上げる技量に関して優劣はありません。
他の例をあげます。
子どもが言う家なので、おもちゃの家の可能性もあります。
わらのお家を作りたい!
業者に頼む=抽象的で理性的な製品の組み立てができる。
自分で作る=具体的で感性的なブリコラージュができる。
このような対比ができます。
目の前にあるあり合わせの材料で何かを作り上げることがブリコラージュです。
業者に頼むと完璧なわらのお家、自分で作ると味のあるわらのお家ができます。
この場合、どちらが良い、ということは言えません。
どちらも視点を変えれば優れている点が見当たるからです。
ブリコラージュは科学的
レヴィ=ストロースはブリコラージュをする人々に対し、「科学を知らない人たちの科学」と呼びました。
科学技術が発達してきたのは近代になってからで、それまで世界は私たちが理性的に理解できるものではありませんでした。
理解はできないけれど、近親婚は禁止しているし、何かしらの文化や法則があるだけです。
ただ、その規則があるからこそ、その場の人々は快適に暮らすことができていたのです。
快適に暮らす。
この事に価値を置いています。
例えば、昔は近親婚だと民族が途絶える危険性があると言われていました。
そうなると、その少ない民族の中でうまく生活をしていくために、近親婚の禁止が規則としてたてられたのです。
必要なときに必要な規則をたてる。
変化をさせるわけではなく、今を継続させるにはどうしたらいいかを考えています。
あり合わせの物をそのまま利用するという考え方です。
ここでの科学を、一定の目的・方法のもとに種々の事象を研究する認識活動と考えます。
そうしたときに、規則の立て方、目的などが一定の方向(快適な暮らしなど)をとっています。
この考え方を「科学を知らない人たちの科学」と呼ぶのです。
ちなみに、わらのお家を作る時、業者さんは足りない部品を取り寄せました。
それは運ぶという手間をかけています。
手間をかけることで、即興で出来なくなる。
かつ、それが現代では移動に資源を使うという観点から、環境破壊につながるという視点にもなります。
論理的に説明できない世界でも、ブリコラージュで作られたものを見ていけば、その構造から私たちが説明できなかった世界を見ることができます。
その世界を快適に成り立たせるために立てられた規則ではないかと推測できるからです。
レヴィ=ストロースは未開の文明から法則を発見し、構造主義をとなえました。
構造主義を知ることで、さらにブリコラージュをみていきます。
ブリコラージュと構造主義との関係
ブリコラージュはレヴィ=ストロースの著書「野生の思考」で語られています。
レヴィ=ストロースは構造主義に代表される人物です。
構造主義とは、人間は社会の構造の中で、そこに染まって生きるという考え方です。
(哲学と宗教 全史 出口治明)
社会の構造が人間の意識をつくるので、完全に自由な人間なんていないという発想になります。
「校則で髪の毛は眉毛の上と決まってたりすること?」
『うん。そこの学校の構造によって、校則が作られる。』
『その校則が、自分の思考の前提になったりしてない?』
「そっか、規則違反している人を見ると、悪いんだーって思っちゃう。」
『みんなその校則に合わせて考えちゃうよね。』
『眉毛の上という校則なら眉毛の上、下なら下にしようと私たちは考えてしまうよね。』
異なる枠組みに従ってるだけなので規則に優劣はつけられません。
そして、その規則を世界の文化とか法律だとかに当てはめます。
世界はいろんな社会から成り立っています。
どの社会が下か上かなどは決められません。
では、そうなると、その中にいる人間とはどんな意味なのでしょうか。
「世界は人間なしに始まったし、人間なしに終わるだろう。」(レヴィ=ストロース「悲しき熱帯」)
ブリコラージュまとめ
ブリコラージュとは、時間と資源が限られた中、その場の即興で切り抜けることをいいます。
この言葉は構造主義を唱えたレヴィ=ストロースが「野生の思考」の中で語りました。
構造主義とは物事を全体の仕組みで考える立場です。
人や文明による優劣はそこにはありません。