SDGs持続可能な開発目標

SDGs(持続可能な開発目標)とは|高校倫理2章2節2

このブログの目的は、倫理を身近なものにすることです。
(高校倫理 新訂版 平成29年検定済み 実教出版株式会社)を教科書としてベースにしています。
今回は
高校倫理第2章「現代の諸課題と倫理」
第2節「環境の倫理」
2.SDGs(持続可能な開発目標)とは
を扱っていきます。
産業革命以降、人類がおこなってきた経済活動や開発は自然環境や生態系に負荷をかけてきました。
それが地球環境問題になり、人類共通の課題になったのです。
2015年の国連サミットで「持続可能な開発のための2030アジェンダ(計画表)」が採択されました。
世界が一丸となって決めた目標。
それがSDGs(持続可能な開発目標)です。
2030アジェンダは「だれ一人取り残さない」(No One Left Behind)というコンセプトを分野別の目標としてまとめました。
全世界で1000万人以上が参加して作った目標で、民主的に決められた
SDGsの内容
  1. 貧困をなくそう
  2. 飢餓をゼロに
  3. すべての人に健康と福祉を
  4. 質の高い教育をみんなに
  5. ジェンダー平等を実現しよう
  6. 安全な水とトイレを世界中に
  7. エネルギーをみんなに、そしてクリーンに
  8. 働きがいも、経済成長も
  9. 産業と技術革新の基礎をつくろう
  10. 人や国の不平等をなくそう
  11. 住み続けられるまちづくりを
  12. つくる責任、つかう責任
  13. 気候変動に具体的な対策を
  14. 海の豊かさを守ろう
  15. 陸の豊かさも守ろう
  16. 平和と国兵をすべての人に
  17. パートナーシップで目標を達成しよう

SDGsは①‐⑥を人間が生きていく上で最低限解決するべき課題。

⑦‐⑫を経済重視の社会が生みだした課題。

⑬‐⑰を環境問題や平和などの国境をまたいだ課題。

というように、異なる特徴の3つがあると覚えておけばよいかもしれません。

次に、具体的にSDGsに取り組むとは何か、を見ていきます。

「SDGsって偽善」って視点を捨てきれない…
だから、なんで偽善って思うんだろうって視点を掘り下げてみる!

ブログ内容

  • SDGsは大嘘?
  • SDGsで今できること

参考文献、「図解でわかるSDGs」(平本督太郎)、「SDGsの大嘘」(池田清彦)、「カオスなSDGs」(酒井敏)、あなたとSDGsをつなぐ「世界を正しく見る」習慣(原貫太)、「食料自給率の「なぜ?」」(末松広行)、

SDGsは大嘘?

『SDGsは大嘘』を参照にして、まずはSDGsに批判的な視線を向けていきます。

本の主張をまとめます。

SDGsは「目標を達成できたら世界には明るい未来が待っているだろう」というようなお題目が掲げられている。

しかし、一つ一つをよく検証してみると矛盾していたり、今の世界で実現することがかなり難しいものも多い。

しかも、全世界がこの17の目標を信じて疑うことなくそのゴールに向かえば、間違いなく世界は今よりも悪くなる。

「地獄への道は善意で敷き詰められている」

では、どのような善意が地獄の道になっているのでしょうか?

本から一部をまとめてみます。

  • プラスチックを燃やしてしまえば海洋汚染は起きない。
    ウミガメにプラスチックストローが刺さっていたことが問題になったが、そもそもゴミを焼却していれば海はキレイ。
    しかし、焼却すると二酸化炭素が排出されるとしている。
  • 化石燃料を燃やさないことがクリーンであるとすれば、クリーンなエネルギーは高価。
    最新の技術を駆使した設備は、専門家でないと修理ができない。
    クリーンエネルギーを作る資源が害をうむことがある。
  • 人口が増えている問題に対しての具体例がない。
    人が増えれば、資源の争奪がおこる。
    どんな種も増えすぎるということは問題を起こすが、減らすということは倫理的に目標にするのは難しい
  • 肉食における環境破壊はあるけれど、嗜好品に制限をかければ経済がまわらなくなる。
    また、多様性を重視しない考え方になる
  • どこかの国が制限しても、その制限した分が他の国に使われていく
  • ソーラーパネルで日本の土壌が「死ぬ」
    その土地の太陽エネルギーがとられることで、生態系が壊されていく

SDGsのどれかの目標に集中すれば、他のどれかが犠牲になることがあげられています。

例えば、DDT(有機塩素系殺虫剤の成分)は生態系を壊しましたが、多くの人々をマラリアから救いました。

「目標にする」というのは他の視点を狭めるという意味にもなります。

エネルギーは循環している

次に、SDGsを疑問に思いながらも、SDGsに取り組むことにした著者の『カオスなSDGs』を紹介します。

カオスなSDGs

『カオスなSDGs』でも、SDGsはリアリティに欠ける理想論だと述べます。

良かれと思ってつくったものでも「全体を把握していない」と、ある目標達成が他の目標達成の邪魔になってしまうのです。

著者が主張していたことは、「全体を把握する」必要性。

全体を把握したい例

  • SDGsと聞いた時に、地球環境問題ばかりに目がいっていないか。
    「いまの自分を犠牲にしてはいけない」
  • 二酸化炭素は「毒」にも「栄養」にもなる。
    植物にとっては栄養
  • 日本の廃プラスチックは25%リサイクルにまわされ、67%が焼却され、8%が埋め立て処理される。
    焼却されたときのエネルギーを日本ではリサイクルと述べている。
    焼却エネルギーは石油のかわりにもなり、熱回収されているのでリサイクルと呼べる。
    ただ燃焼されるプラスチック燃料という知識は知っておきたい。
  • 日本の焼却技術は世界トップレベル
  • リサイクルしたものは劣化していく。
    なんでもリサイクルしようとした結果、粗悪品が出回ることでの弊害がある

本では、SDGsを「社会の暴走を防ぐリミッター」として捉えればよいのではないか、と述べていました。

一つの目標を主張しすぎれば、他の目標に害が及ぶので、暴走を防ぐことが可能になると考えるのです。

そして、そのためには知っていくことが必要です。

次に、実際にSDGsの活動をしている『あなたとSDGsをつなぐ「世界を正しく見る」習慣』を紹介します。

SDGsで今できること

『あなたとSDGsをつなぐ「世界を正しく見る」習慣』の筆者は、アフリカで貧困問題に実際に取り組んでいます。

けれど、どんなに取り組んでも貧困はなくならない。

その場しのぎの対処療法にならないのではないか、というジレンマに直面していました。

そのことから、「世界を正しく見る」ことを発信するようにしたそうです。

「その原因(貧困など)を構造的に理解し、取り除く努力をしなければ、一つの問題が解決したとしても、また別の新たな問題がうまれてしまう」(p9)

問題を取り除くために「世界を正しく見る」。

本から具体例をまとめてみます。

一部まとめ

  • 先進国からの衣類の寄付(善意)は、途上国の人々の経済発展や自立する力を奪っていく。
    魚の取り方ではなく魚を与えられるので、次につながらない。
    また送られた衣服はその土地でゴミ問題を引き起こしている。
  • 人々の流行がゴミや二酸化炭素を増やす。
  • 肉食は世界の水不足問題につながっている。
    畜産物や農作物には多量の水が消費されている。
    家畜のエサのために広大な土地や食料を使い、飢餓に苦しむ人々よりも家畜が優先される。
  • 「資源の呪い」⇒資源が豊富だからそれが争いの原因になり、かえって貧しくなること。
    スマートフォンをつくるための鉱物など、電子機器の材料は紛争や環境悪化の原因になっている。

全体を知ると、ただ支援が大事、とは言えないのです。

アフリカに井戸を作っても、それを維持するシステムがそこになければ壊れてしまって終わり、らしい…

SDGsの本3冊から、その問題と言われている部分をまとめてみました。

では、私たちに何ができるのでしょうか?

では、何をしたら良いのか?

肉食や流行が当たり前の世界に生きている私たちは、それらを止めることは難しい
前提が異なれば、対処も異なるというのはこれらの問題を考える上で必要になってきます。
あなたが畜産業に関わっていれば、その行動をしなければあなたが生きていくのが難しくなる。
先進国にいるからといって、幸せなわけではない。
上からの指示によって、そう行動せざるを得ない。
出されたものは食べた方が、廃棄問題にならない。
そして、このような構造を突きつめていけば、私が善意で行動したとしても、それが悪いことにつながる可能性があります。
あるシステムが確立されていたら、それを急に壊すことは多くの人の貧困につながってくる
マルクスは未来は予知できないと考えていた。
私の行動は何につながるのかわからない。
また、カントはゆっくりと平和に向かうと良いと述べていた。
革命は多くの人を傷つける
それでも、私たちは生きています。
それならば、本で述べているような自分が良いと思えるようなことを少し生活に取り入れれば罪悪感が減るかもしれません。
毎日意識できることの一つは食事です。

SDGsと身近な食問題

SDGsで良いとされていることの一つに、食料自給率を上げること、があります。
‐「SDGsが大切だ」「サステナビリティを目指すんだ」と言うのなら、まずは食糧危機に備えて、日本人が飢え死にしないように国内自給率を上げていくことのほうが、日本にとって本当の意味でのSDGsになるはずだ。
『SDGsの大嘘』(p49)
日本の食料自給率問題を考えるために、『食料自給率の「なぜ」?~どうして低いといけないのか?~』を参考に見ていきます。
日本の食料自給率は約40%。
日本の食料自給率はカロリーベースで計算されています。
食業自給率=「国民一人への一日当たりの国産供給カロリー(約1000kcal)/国民一人への一日当たりの総供給カロリー(2500kcal)=40%」
国産供給カロリーが高くなれば、食料自給率は高くなるという計算です。
1965年の日本の食料自給率は73%でした。
どうして高かったのかというと、多くのカロリーがお米やイモでまかなわれていたからです。
現代では食が多様化しました。
例えば、豚肉の飼料は輸入でまかなわれているので、豚肉は国内産であったとしても輸入分は国産としてカウントされません。
私が豚肉定食(1000kcal)を食べたとして、ごはん(国産300kcal)豚肉(国産100kcal、輸入600kcal)で、食料自給率は40%
本では、食料自給率を上げるには、日本人がお米を一口多めに食べればよいのではないか、と述べていました。
食糧廃棄が騒がれているけれど、供給カロリーはデータを取り始めた1965年頃からあまり変わっていなくて約2500kcal。
その分、日本人は摂取カロリーが減っている
食糧自給率を上げる、といっても、その知識がなければ食料自給率は上げられません。
これらのSDGsの本に関連していることは、全体的な知識を知ろうというものでした。
次回は、動物倫理について考察していきます。
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